食品工場におけるエネルギー消費は、環境への影響だけでなく、製造コストにも大きな影響を与えます。そのため、食品工場の省エネ対策が必要とされています。

この記事では、食品工場でできる省エネ対策として、太陽光発電の導入、蓄電池の導入、地熱や地中熱の導入まで、再生可能エネルギーについて紹介しています。

また、「新電力」の選択の検討、室内温度設定の最適化、老朽化した設備の見直し、電力消費の効率化、断熱・遮熱対策、エネルギーの計測・診断、そしてメンテナンスの見直しなど、食品工場の省エネ対策に焦点を当て解説しています。

食品工場の省エネ対策とは？

食品工場で可能な省エネ対策について10個をご紹介します。

①太陽光発電の導入

太陽光発電システムの普及が、日本での省エネ対策の中心的な役割を果たしています。例えば食品工場では、広い屋根に太陽光パネルを設置し、その場で生成された電力を使用することにより、電気料金の大きな削減と二酸化炭素の排出量の減少を実現しています。

最近では、屋根だけでなく、使用されていないスペースに太陽光パネルを設置する取り組みも広がっています。エネルギー消費が多い工場では、屋上に自家消費用の太陽光発電設備を設置することが一般的ですが、この方法だけでは消費電力の1〜2割を賄うのがやっとの状況です。

この問題に対処するために、工場の未使用スペースを活用した太陽光発電の導入も可能です。例として、駐車場の屋根に太陽光発電を組み合わせた設備により、駐車場を利用した発電能力を向上させています。

②蓄電池の導入

蓄電池を太陽光発電システムと組み合わせることで、生成された電力を貯蔵し、必要なときに企業が自ら使用する「自家消費」が実現し、電気料金の大幅な削減が可能となります。

ピークカット

ピークカットとは、最も電気を使う時間帯の電気使用量を減らすことです。

電力需要が高まる時間帯に蓄電池から電力を供給し、需要が低い時には充電を行うことで、電力使用のピークを減少させます。これにより電力契約の最適化が可能になり、コスト削減が図れます。

ピークシフト

ピークシフト とは、電気使用量が少ない時間帯に電気を蓄え、ピーク時に使うという意味です。

蓄電池の導入により、生成した余剰電力を無駄なく蓄電し、使用することが可能になります。深夜の安価な電力を蓄電し、昼間の高価な時間帯に使用することで、電気料金を削減できます。

太陽光発電と蓄電池の組み合わせにより、電力会社からの電力購入量を減少させ、コスト削減だけでなく、環境に優しい自家発電システムの利用が可能になります。

③地熱の導入

太陽光発電の他にも、多様な再生可能エネルギーが開発され利用されています。この中で、「地熱」エネルギーは、安定供給が可能な国内資源として特に注目を集めています。食品工場を含むさまざまな施設での採用も増えています。

地熱の導入

「地熱」と言えば、その主な利用方法として「発電」が思い浮かぶことが多いでしょう。地熱発電は、地下深くからの蒸気を使って直接タービンを動かし電気を生成する方法であり、火力発電などと比べていくつかの明確な利点を持っています。

利点としては、輸入に依存しない国内資源からのエネルギー供給、燃料不要でCO2排出がない、長期間にわたって安定して供給可能などがあります。

しかし、地熱発電は特定の地理的条件を必要とするため、見えない地下の資源を掘り出す際に高額な費用が発生する可能性があり、開発のリスクが高いという欠点もあります。このため、太陽光発電のように迅速に普及させることは困難とされています。

地中熱の導入

「地熱」と「地中熱」は異なる概念です。地熱は地球の内部、特にマグマからの熱を指し、一方で地中熱は、地表近くの浅い地層に存在する低温の熱エネルギーを意味します。

地中熱は、比較的浅い地層に存在する低温熱です。地中熱が重宝される理由は、地下の温度が年間を通じてほぼ一定（およそ15℃）で安定していることにあります。この一定の温度は、夏は外気よりも低く、冬は外気よりも温かいため、冷暖房システムに効率的に活用できます。

地中熱を利用した冷暖房・給湯システムには、外気温が-15℃以下の厳しい環境でも機能し、室外機が不要で稼働音が極めて小さいといった多くの利点があります。これらの利点から、製造現場や食品工場でも導入が可能です。

④「新電力」を検討する

「新電力」とは、電力市場の自由化に伴い参入した新しい電力供給会社を指します。これらの会社を利用することで、追加の費用をかけずにエネルギー節約の取り組みが可能になります。

ただし、新電力と従来の大手電力会社の料金を一概に比較することはできません。料金は地域や選択する新電力会社によって異なるため、慎重に価格比較を行うことが重要です。

既に新電力への切り替えを行っている施設であっても、時間の経過と共に市場に新たな供給会社が登場していることがあります。そのため、定期的に市場を見直し、最適な電力供給会社を選択するようにしましょう。

⑤電力消費を見直す

食品工場では多様な設備が稼働しており、それらは大量のエネルギーを消費します。そのため、電力消費を見直すことが、省エネの実現に不可欠です。

例えば、施設の照明をLEDに変更したり、空調設備を最新型に置き換えることで、省エネ効果を達成することが可能です。特に水銀灯からLED照明への更新は、省エネの良い事例として挙げられます。

LED照明は水銀灯や白熱灯と比べて消費電力が少なく、同等の明るさを実現しつつ、エネルギー効率を大幅に改善できます。初期投資は必要ですが、長期的な視点で見れば、省エネ効果を享受できるでしょう。

⑥室内の温度設定を見直す

食品工場では、空調や冷凍冷蔵設備が大きなエネルギー消費源です。これらの設備の効率化により、エネルギーを節約することが可能になります。食品工場における冷凍庫や冷蔵庫の温度設定は、省エネの観点から設定温度を製品に影響を与えないように最適化することが推奨されます。

⑦老朽化した設備を見直す

製造設備の老朽化は、不必要なエネルギー消費を引き起こす主な要因の一つです。古い設備を最新のエネルギー効率の高いものに置き換えることで、エネルギー消費を大幅に削減できます。

⑧断熱・遮熱を見直す

食品工場においては、建築物への遮熱や断熱対策によって省エネ効果が見込めます。建物の断熱性を高めることにより、外部温度の変動が室内に影響し、結果として空調システムのエネルギー消費を減少させることが可能です。

⑨計測・診断を見直す

エネルギー節約の取り組みを開始する上で、「計測・診断」は必要です。どのエリアに省エネの取り組みを実施するかによって、工場全体の運営状況が大きく変化する可能性があります。

具体的には、エネルギー消費の現状把握、季節変動への対応、生産スケジュールの調整など、多岐にわたる要素を継続的にモニタリングすることが求められます。どの部分を改善するかを判断するためには、これらの情報を正確に把握する必要があります。

特に、電力の日中や年間を通じた消費変動を追跡し、エネルギー使用の状況を理解することが、省エネ戦略において重要なポイントとなります。

⑩メンテナンスを見直す

食品工場の省エネ対策として、生産ラインの定期的な検査、フィルターのクリーニング、空気漏れの修理といったメンテナンスの重要性は高いです。

継続的な省エネ活動を通じて、徐々に工場の効率化とコスト削減が実現します。これを達成する鍵となるのは、定期的なメンテナンスの実施です。省エネ設備の細かなチェックにより、運用の最適化とメンテナンス作業の効率化が見込まれます。

メンテナンスを怠ると、最悪の場合、生産ラインが停止し、工場の稼働に支障をきたす可能性があります。省エネ設備への投資だけでなく、日々の保守管理の実施も、省エネ効果を高める上で欠かせない要素でしょう。

まとめ

食品工場の省エネ対策とは？

①太陽光発電の導入

②蓄電池の導入

③地熱の導入

④「新電力」を検討する

⑤電力消費を見直す

⑥室内の温度設定を見直す

⑦老朽化した設備を見直す

⑧断熱・遮熱を見直す

⑨計測・診断を見直す

⑩メンテナンスを見直す

食品工場における省エネ対策は、持続可能な製造プロセスを実現し、環境への負担を軽減しつつ運営コストを削減するための重要な取り組みです。紹介した省エネ対策を総合的に実施することで、食品工場はエネルギー効率を向上させ、経済的利益と環境保護の双方を実現できます。この記事を参考に自社の食品工場の省エネ対策について検討してみましょう。