食品工場における品質管理は、製品の品質を保つだけでなく、消費者の健康と安全を守るために不可欠です。この記事では、情報を基に食品工場の品質管理方法を6つご紹介します。具体的には、PDCAサイクルを回す、5S活動の実施、HACCPを行う、ISO22000（食品安全マネジメントシステム）に対応する、TQC（総合的品質管理）活動を行う、コンプライアンスを遵守する等、食品衛生を重視した管理手法について解説します。

食品工場の品質管理の必要性とは？

食品工場が提供する食品には「安全性」「味が良い」「適切な価格」が求められますが、中でも「安全性」は最も重要な要素です。これは、食品の安全性が消費者の健康に直接関わり、食中毒などの事故が生命に関わる重大な問題を引き起こす可能性があるからです。さらに、企業の将来にも大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、施設ごとの環境や制度を整備し、対策を講じた安全な品質管理による健康被害の防止は、食品業界における最優先事項といえるでしょう。

食品工場の品質管理の方法とは？

主な食品工場の品質管理の方法について、6つをご紹介します。

PDCAサイクルを回す

品質管理を効果的に行うためには、「PDCAサイクル」の原則に基づいて、プロセスを円滑に進めることが不可欠です。

PDCAサイクルは「Plan：計画を立てる」➡「Do：計画を実行する」➡「Check：実行結果を評価する」➡「Action：改善策を講じる」という、品質管理活動を継続的に行うフレームワークです。

品質管理の目的は、食品製造過程を常に適切な状態に維持し、問題が見つかった際には迅速に対処して元の状態に戻すことにあります。しばしば、問題の原因を特定し一時的な改善を施したものの、その改善効果を確認せずに終わるケースが見られます。このように問題が再発する場合、PDCAサイクルが適切に機能していないことが原因と考えられます。

PDCAサイクルを効率良く回すためには、以下のポイントが重要です。

・問題の正確な理解と現状の把握を徹底し、問題点を明確に特定します。

・改善策の策定は、品質管理部門のみに留まらず、製造現場や他の関連部署の意見も積極的に取り入れ、広範な合意形成を目指します。

・改善措置を実行した後は、成果が期待どおりに得られているかを評価し、その結果を確認します。

・改善後も問題が残る場合は、根本原因を再調査し、より効果的な改善策へと修正を加えます。

5S活動の実施

5Sは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つの始まりの文字を取って名付けられた品質管理の基本的な概念です。これら5つの要素を日々の業務に取り入れることで、製造過程での人的ミスを減らすことが可能になります。

「整理」（Seiri）

「整理」とは、必要なものと必要でないものを仕分けし、不用品を処分することを意味します。

「整頓」（Seiton）

「整頓」とは、必要な物を使いやすいようにきちんと起き、誰にでも分かるようにすることを意味します。

「清掃」（Seisou）

「清掃」とは、常に清掃し、綺麗にすることを意味します。

「清潔」（Seiketsu）

「清潔」とは、上記の整理、整頓、清掃の3Sを組み合わせて清潔な状態を維持する活動を意味します。

「しつけ」（Shitsuke）

「しつけ」とは、上記の整理、整頓、清掃、清潔の4Sが確実に実施されるよう、習慣づけることを意味します。

FOOD TOWN内にも5Sについて更に詳しくご紹介している記事もあるので、こちらもご覧ください。

HACCPを行う

HACCPとは、「Hazard（危害）」「Analysis（分析）」「Critical（重要）」「Control（管理）」「Point（点）」という5つの英単語の頭文字を組み合わせた食品安全管理の手法です。

このシステムは日本語で「危害要因分析重要管理点」と訳され、「Hazard Analysis」は「危害要因分析」を、「Critical Control Point」は「重要管理点」をそれぞれ指します。

HACCPは、原料の受け入れから製品の配送に至るまでの全プロセスにわたり、潜在的な危険を特定し、それらを制御するための衛生管理計画を策定・実施・文書化することが求められます。

2020年、改正された食品衛生法が実施され、HACCPの義務付けが開始されました。この法律の施行に伴い、事業者にはHACCPを適用するための1年の準備期間が与えられ、その猶予期間が終了した2021年にHACCPの完全義務化が施行されました。

HACCPと従来の品質管理の違いとは

伝統的な食品の品質管理法では、完成品からランダムにサンプルを選び出し検査する手法が広く採用されていました。この方法は、選ばれたサンプルがたまたま問題がないものであれば、実際には存在するかもしれない衛生上の問題を見落とすリスクがあり、サンプルの選択に偏りが生じるという欠点を持っています。

一方で、HACCPに基づく衛生管理では、食品の調達から配送に至るまでのすべてのプロセスを管理し、監視する品質管理体系が確立されています。この体系の中で、特に注意を要する安全管理の重点ポイントを「重要管理点（CCP）」と定義し、HACCPではこれらのCCPに焦点を当てて衛生管理を行い、食品製造プロセスのリスクを管理します。HACCP方式は、事前に潜在的な危害要因を特定し、それらを管理することで、製造過程全体の安全性を保証するという特徴があります。

ISO22000（食品安全マネジメントシステム）に対応する

ISO22000は、国際標準化機構（ISO）によって設定された食品安全に関する国際規格であり、食品安全マネジメントシステム（FSMS）とも呼ばれます。

この規格は、組織の経営体制と、食品安全を確保するためのHACCPの原則に基づく部分で構成されています。主に、食品事故のリスクを減らし、その再発を防ぐための体制を整えることを目的としており、ISO22000の認証を取得することで、企業は食品安全への取り組みが適切に行われていることを外部に示すことができます。

HACCPとISO22000の違いとは

HACCPは、食品製造の各段階で潜在する危害要因を識別し、食品事故の発生を防止することで食品の安全を確保する管理システムです。対照的に、ISO22000は製造プロセスだけでなく、農場から消費者の手に渡るまで関わる全ての事業者を対象とした食品安全マネジメントシステムであり、HACCPを内包しています。そのため、ISO22000の認証を取得するには、HACCPの実施が必要です。

TQC（総合的品質管理）活動を行う

TQC（総合的品質管理）は、製造業を中心に、製造プロセスだけでなく、設計、調達、販売、マーケティング、アフターサービスなどの各部門が一体となって取り組む品質管理のアプローチです。この取り組みは、組織全体で統一された目標に基づき、製造に留まらず、設計や購入などの非製造部門にも品質管理の原則を適用し、体系的に行うことを指します。

品質管理の問題に対処するため、HACCPやISO22000（食品安全マネジメントシステム）のようにシステム化された管理が求められていますが、これらの管理システムだけでは対応が難しいのが現状です。

解決策としては、TQC活動（総合的品質管理）を通じた品質重視の文化の醸成と、HACCPやISO22000などの管理システムを組み合わせた効果的な品質保証体制の構築が推奨されます。

コンプライアンスを遵守する

近年では、国内外を問わず、食品の産地偽装などコンプライアンス違反の事例が発生しています。食品業界におけるコンプライアンス問題は、特に「原材料の産地偽装」や「誤った原材料名の表記」など、原材料に関連する問題が中心です。コンプライアンス違反は、一部の個人の行為ではなく、経営層を含む組織全体による行為が多いことが指摘されています。そのため、経営者は企業の社会的責任を果たし、コンプライアンスの遵守に自ら積極的に取り組む必要があります。

まとめ

食品工場の品質管理の必要性とは？

食品の「安全性」は最も重要な要素です。そのため、安全な品質管理による健康被害の防止は食品業界における最優先事項です。

食品工場の品質管理の方法とは？

・PDCAサイクルを回す

・5S活動の実施

・HACCPを行う

・ISO22000（食品安全マネジメントシステム）に対応する

・TQC（総合的品質管理）活動を行う

・コンプライアンスを遵守する

食品工場における品質管理は、消費者の健康と安全を守る上で欠かせない要素です。この記事でご紹介した品質管理の方法を通じて、安全性、味の良さ、適切な価格を備えた食品の提供が可能となります。厚生労働省の指導の下、法令を遵守し、品質管理を推進することで、消費者の信頼を獲得し、企業の持続可能な成長を支えることができるでしょう。以上、品質管理の重要性とその実践方法について詳しく解説しました。

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