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食品工場で起こりやすい労働災害の事故とは?解決策を解説コラム
食品工場での労働災害は他業界に比べて頻繁に発生しています。そのため、食品工場での労働災害を理解しておく必要があります。この記事では、食品工場で労働災害が起こる理由、食品工場で起こりやすい労働災害の事故、そしてこれらの事故を防ぐための解決策を徹底解説します。
食品工場で労働災害が起こる理由とは?
労働災害の対策が十分ではない
人手不足が深刻化している食品工場の業界では、労働環境の改善に力を入れる必要があります。この労働環境の改善には、従業員の安全と健康が重要な要素です。それにもかかわらず、食品製造業界での労働災害は他の産業や製造業の平均を大きく上回る頻度で発生しています。食品産業では日常の作業で直接的、潜在的なリスクへの対処は行われていますが、実際に積極的な安全対策を実施している企業はまだ少ないとされています。企業は、危険箇所の特定、事故の記録と把握、第三者によるチェック、使用方法の文書化と可視化など、積極的な安全対策に全社を挙げて取り組むべきでしょう。
労働環境が悪い
従業員が危険を伴う作業を実施する際には、食品製造業をはじめとするあらゆる業界で安全教育の徹底が求められます。特に食品製造業界では大型機械の使用が一般的です。
大型機械の操作にあたって、「なぜそれが危険か」という点に関する教育を徹底しないと、安全確保のための規則や手順の理解が不十分となり、労働災害のリスクを高めてしまいます。労働災害は、人手不足が一因となるケースも少なくありません。例えば、通常2人で行うべき作業を1人で担当させたり、休暇が取りづらい環境で従業員に長時間労働を強いるなどの状況が挙げられます。人手不足による無理な労働環境が労働災害を引き起こすと、その責任は企業に問われることになるため、特に注意が必要です。
食品工場で起こりやすい労働災害の事故・事例とは?
はさまれ・巻き込まれ事故
食品製造業では、機械による挟まれ事故や巻き込まれ事故が発生することがあります。これらの事故は主に操作ミスや機械管理の不備が原因です。
安全を確保するためには、作業服は巻き込まれ防止のために適切なサイズを選び、袖口が広がらないようにすることが重要です。また、ローラーやミキサー等には安全ガードや緊急停止スイッチを設置し、緊急時には速やかに機械を停止させます。機械に異常が発生した際は、直ちに使用を中止し、責任ある者に報告後、再開の許可を得てから作業を続けることが求められます。
事例1:ベルトコンベアによる事故
ある食品工場で、清掃作業中に労働者の手がベルトコンベアに巻き込まれました。手袋がコンベアに引き込まれ、手が挟まれるという事故が発生しました。原因は、機械が稼働中に清掃を行っていたことと、安全装置が適切に機能していなかったことです。
事例2:プレス機による事故
別の食品工場では、プレス機を操作中に労働者の腕が挟まれる事故が発生しました。労働者が機械の調整を行っていた際に誤って操作し、プレス機が稼働したため、腕が挟まれてしまいました。原因は、機械の安全スイッチが無効になっていたことと、適切な操作手順が守られていなかったことです。
事例3:ミキサーによる事故
食品工場で、ミキサーの清掃中に労働者の袖がミキサーのシャフトに巻き込まれる事故が発生しました。袖が引き込まれ、腕が負傷しました。原因は、ミキサーの電源を切らずに清掃を行っていたことと、袖の緩い作業服を着用していたことです。
転倒事故
食品工場での転倒事故は、滑りやすい床や作業中に発生する障害物が主な原因であり、多様な物資や機械の使用によって床の状態が変わり、転倒事故が起こりやすくなります。
安全対策としては、床が水や油、食材で汚れている場合には定期的に拭き取り、水はけを良くするための斜面を設けるなどして清潔に保つことが重要です。また、滑りにくい専用の履物を使用し、摩耗した場合はすぐに新しいものに交換するなどが必要です。
事例1:床の清掃中の転倒事故
ある食品工場で、清掃作業中に労働者が床にこぼれた油に滑って転倒しました。この労働者は腰を強く打ち、数週間の休業を余儀なくされました。原因は、清掃中に油が拭き取られていなかったことと、適切な滑り止め靴を履いていなかったことです。
事例2:段差による転倒事故
別の工場では、労働者が製造エリアから倉庫へ移動する際に、小さな段差に足を取られ転倒しました。この労働者は足首を捻挫し、作業に復帰するまでに時間がかかりました。原因は、段差が視認しづらく、床の標識や注意喚起が不十分であったことです。
事例3:濡れた床による転倒事故
食品加工エリアで、洗浄作業中に労働者が濡れた床で滑り、膝を強打しました。この事故の原因は、作業区域に「滑りやすい」との標識がなく、また、床の乾燥が不十分であったことです。
墜落、転落の事故
食品工場においては、作業の中に高所での業務が含まれることがあり、適切な安全対策ができていない場合、墜落や転落の事故が発生する可能性があります。
高所での作業を行う際には、特別な注意を払い、必要な安全装備を使用することが重要であり、これを怠ると墜落や転落の危険性が増します。
事例1:階段での転落事故
別の食品工場では、労働者が階段を降りる際に足を滑らせて転落しました。手すりを持っていなかったため、階段の下まで転がり落ち、頭部に重傷を負いました。原因は、階段が滑りやすい状態であり、手すりの設置が不十分であったことです。
事例2:棚からの転落事故
食品倉庫で、労働者が高い棚から商品を取ろうとしてバランスを崩し、墜落しました。この労働者は、適切な踏み台やはしごを使用せずに棚によじ登ったため、落下して負傷しました。原因は、適切な作業用具が使用されていなかったことと、高所作業の安全対策が不十分であったことです。
動作の反動、無理な動作の事故
食品工場における重労働や反復作業は、従業員に無理な体の動きや重い物の持ち運びをしいてしまい、これが過剰な身体負担となり腰痛などの怪我の一因となります。
この問題に対処するための防止策として、重量物の搬送を軽減する、作業空間の整備、体操やストレッチの導入が挙げられます。
事例1:重い物の持ち上げによる腰痛
ある食品工場で、労働者が重い袋を持ち上げる際に腰を痛めました。この労働者は正しい持ち上げ方を知らず、背中を丸めた状態で持ち上げたため、腰に過度な負担がかかりました。原因は、適切な持ち上げ技術の教育が不足していたことと、重量物を扱うための補助具が提供されていなかったことです。
事例2:不適切な姿勢での作業による膝の負傷
食品工場で、労働者が低い位置での作業を長時間続けた結果、膝を痛めました。この労働者は、しゃがんだまま作業を続けていたため、膝に過度な負担がかかりました。原因は、作業台の高さが適切でなかったことと、適切な姿勢での作業指導が行われていなかったことです。
切れ・こすれの事故
食品工場の現場で使用される鋭利な刃物や、機械の切削部による怪我があります。製造作業では、これらの道具や機械の取り扱いに際して、高度な注意が求められます。
安全対策として、カット作業や機械の清掃時には耐切創手袋を着用し、衛生手袋を重ねて使用することが推奨されます。また、機械使用時には安全ガード設置、電源オフでの詰まり除去をしておきましょう。
事例1:包丁による切れ事故
ある食品工場で、労働者が魚をさばいている最中に包丁で指を切ってしまいました。この労働者は手袋を着用していなかったため、深い切り傷を負い、数針縫う必要がありました。原因は、手袋の不使用と、適切な包丁の取り扱い方法が守られていなかったことです。
事例2:スライサーによる切れ事故
別の工場では、労働者がスライサーでハムをスライスしている際に、誤って手をスライサーの刃に当ててしまいました。この労働者は、スライサーの安全ガードを取り外して作業していたため、指に深い切り傷を負いました。原因は、安全ガードの未使用と、機械の操作ミスです。
事例3:ベルトコンベアによるこすれ事故
食品工場で、労働者がベルトコンベアで製品を運ぶ作業中に、手がベルトに巻き込まれ、手の甲がこすれて火傷のような怪我を負いました。この事故は、労働者がベルトコンベアに手を近づけすぎたことと、安全カバーが取り外されていたことが原因です。
薬品による事故
食品工場では、殺虫剤、調理機器、施設清掃用の洗剤、消毒液といった様々な化学薬品を頻繁に使用しています。
これらを適切に扱うためには、正確な使用方法を守ることが重要です。また、薬品が飛散したり吸い込むリスクがある場合には、適切な保護具を着用することが求められます。
事例1:消毒剤による皮膚の火傷
ある食品工場で、労働者が高濃度の消毒剤を取り扱っている際に、手袋を着用せずに作業を行ったため、消毒剤が手に触れて皮膚の火傷を負いました。原因は、適切な防護具の未使用と、安全な取り扱い方法の不徹底です。
事例2:化学薬品の混合による有毒ガスの発生
別の工場では、労働者が異なる種類の洗浄剤を混ぜた際に、有毒なガスが発生し、労働者が吸入して呼吸困難を起こしました。この事故の原因は、化学薬品の混合に関する知識不足と、作業手順の確認不足です。
事例3:薬品の漏洩による事故
食品工場の倉庫で、薬品を保管していた容器が破損し、薬品が漏れ出しました。この漏洩に気付かなかった労働者が薬品を踏んで滑り、転倒して負傷しました。原因は、薬品の保管方法が不適切であり、定期的な点検が行われていなかったことです。
騒音の事故
騒音レベルが高い工場では、作業員の聴力損失のリスクが存在します。騒音の影響を軽減するためには、イヤーマフや耳栓の使用が効果的です。特に、耳栓は小さいため気付かずに失くしてしまうことがありますが、食品製造の現場では金属検出器で検知可能な金属を含む耳栓や、紛失防止のための紐付き耳栓の使用が推奨されます。
事例1:聴力障害の発生
ある食品工場で、労働者が長時間高い騒音環境で作業を行っていた結果、聴力障害を発症しました。この労働者は耳栓や防音ヘッドセットを使用していなかったため、騒音によるダメージを直接受けてしまいました。原因は、適切な防音対策が講じられていなかったことです。
事例2:騒音による集中力低下と機械操作ミス
別の工場では、労働者が騒音環境で作業をしている最中に、集中力が低下して機械の操作ミスを犯し、手を負傷しました。騒音によって注意力が散漫になり、機械の安全操作手順を誤ってしまったことが原因です。
事例3:コミュニケーションの困難による事故
食品工場のライン作業中に、労働者同士が騒音で指示を聞き取れず、誤った作業を行ってしまいました。その結果、製品が損傷し、機械も故障するという事故が発生しました。原因は、騒音によって労働者同士のコミュニケーションがうまく取れなかったことです。
火傷の事故
火傷は、加熱された調理器具の表面に触れたり、熱い食品の取り扱い中に、熱湯や高温の油が跳ねて肌に接触することで発生します。
高い温度の鍋や調理器具を扱う際には、鍋つかみや耐熱性の保護手袋を使用することが安全策とされます。しかし、これらが水分を含んでいると、熱が伝わりやすくなり蒸気火傷のリスクが生じるため、常に乾燥させてから使用することが推奨されます。
事例1:熱湯による火傷
ある食品工場で、労働者が鍋を持ち上げた際に熱湯がこぼれ、手に火傷を負いました。この労働者は適切な防護手袋を着用しておらず、また、鍋の持ち上げ方が不適切でした。原因は、労働者の不適切な作業手順と防護具の不使用です。
事例2:蒸気による火傷
別の工場では、労働者が蒸気殺菌機を操作中に、誤って蒸気バルブを開けてしまい、顔と腕に火傷を負いました。この事故は、労働者が蒸気の取り扱い方法を十分に理解していなかったことと、安全装置が適切に機能しなかったことが原因です。
事例3:熱い油による火傷
食品工場のフライヤーで、労働者が揚げ物を取り出す際に、誤って熱い油が跳ねて顔に火傷を負いました。この事故の原因は、防護具の不使用と、適切な作業手順が守られていなかったことです。
高温の事故
高温環境下では熱中症のリスクが高まります。熱中症は、本人がその知識を持たない場合、気づかぬうちに重症化することがしばしばあります。
このため、定期的な水分と塩分の補給が重要であり、送風機付きユニフォームも有効な予防策となり得ます。40℃を超えるような極端に暑い環境では、送風機を使用しても熱風が吹き込むため、期待するほどの冷却効果は得られない場合があります。保冷剤を挿入できるベストや、冷水を循環させることで冷却効果を提供するベストの使用が推奨されます。
事例1:高温環境による熱中症
食品工場の乾燥室で、労働者が長時間作業を行っている最中に、熱中症を発症しました。この労働者は休憩を取らずに作業を続けており、水分補給も十分に行っていませんでした。原因は、高温環境での作業管理が不十分であったことと、適切な休憩と水分補給の指導がされていなかったことです。
低温の事故
低温の事故として、冷蔵庫や冷凍庫などの寒冷環境下では、低体温症や凍傷のリスクが高まります。
そのため、防寒具を用いた保温対策が不可欠です。防寒タイプのユニフォーム、および手袋の着用は、寒さから身を守るのに効果的な手段です。また、モバイルバッテリーで充電可能な電熱ベストも販売されており、これらの対策を講じることで、寒冷による健康被害を防ぐことができます。
事例1:冷凍庫内での低体温症
ある食品工場で、労働者が冷凍庫内で長時間作業を行っていた結果、低体温症を発症しました。この労働者は適切な防寒具を着用しておらず、定期的な休憩も取っていませんでした。原因は、防寒対策の不備と作業管理の不足です。
事例2:凍傷による手の損傷
別の工場では、労働者が氷を取り扱う際に手袋を着用せず、手に凍傷を負いました。この労働者は素手で氷を扱っていたため、長時間の接触により手が凍傷になりました。原因は、防護具の不使用と適切な作業手順が守られていなかったことです。
事例3:冷凍食品の運搬中の事故
食品工場で、労働者が冷凍食品を運搬中に滑って転倒し、冷凍食品が体に接触して火傷のような損傷を負いました。この事故の原因は、運搬経路が滑りやすい状態であり、労働者が適切な履物を着用していなかったことです。
食品工場で労働災害の解決策
5S活動を徹底する
食品製造業における労働安全を高めるためには、5Sの実践とその見直しが必須です。5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つの始まりの文字を取って名付けられた品質管理の基本的な概念です。5Sは食品製造業で広く採用されていますが、これらが徹底されていない場合、作業中に予期せぬ事故やトラブルのリスクが高くなります。労働安全を確保するための工場運営には、5Sの原則を再認識し、徹底することが求められます。5S活動について詳しく書いた記事もありますのでこちらもご覧ください。
働きやすい労働環境を作る
職場の安全性は、働きやすい環境作りが基盤となっています。企業はまず、作業現場の具体的な状況を正確に理解し、従業員が円滑に業務を遂行できるような環境整備が求められます。
特に大規模な企業では、経営層や責任者と現場スタッフ間の認識のズレが生じやすいため、このギャップを縮めることが重要です。そのためには、経営層が現場の意見や感覚に耳を傾け、従業員が衛生管理や安全管理に関してどの程度の理解を持ち、何を危険と感じているのかを把握することが必要です。
経営層と従業員との間でコミュニケーションが盛んに行われることで、改善すべき点が浮かび上がってきます。そして、それらに対する適切な対応策を講じることにより、労働安全に配慮した食品工場の構築が可能になります。
まとめ
食品工場では労働災害が他業界に比べて頻繁に発生し、これは労働災害の対策不足と、労働環境が悪いのが主な原因です。労働災害を防ぐためには、5Sの実践や、働きやすい環境の整備が必要であり、安全対策と労働環境の改善に取り組むことが重要です。
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