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OEMとは?メリット・デメリット【食品工場の用語解説】コラム



食品産業などにおけるOEMは、企業が独自ブランドの製品を市場に投入する際の重要な方法です。この記事ではOEMとは何か、依頼企業と受託側のそれぞれのメリットとデメリットを解説します。

OEMとは?

OEM(相手先商標製品製造)の概要

OEMは「Original Equipment Manufacturing(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャリング)」の略で、他社のブランドのために製品を製造することを指します。日本語訳は「相手先(委託者)商標製品製造」となります。

この生産方式は現在、様々な業界で広く用いられており、食品、化粧品、アパレル、自動車産業などで特に一般的です。もともとは下請け製造の一種としてスタートしましたが、現在では市場における主要な生産戦略として位置付けられています。実際に、私たちが日常使用している多くの製品が、このOEM生産方式によって製造されています。

 OEMの役割と目的

1.製造供給の効率化とコスト削減

OEMは他社のブランド名で製品を製造することで、依頼企業が自社での製造設備を持たずに、ブランド製品を市場に供給する手助けをします。これにより、企業は初期投資を抑えつつ、迅速な市場参入を実現できます。

また、製造設備や人件費に投資せず、OEMメーカーに発注し、メーカーの設備や技術力を活用することで、生産コストの削減が可能です。大量生産による規模の経済効果も得やすいため、製品のコストを下げられるというメリットもあります。

OEMは幅広い分野で利用されており、特定の製品分野に特化したOEMメーカーを利用することで、製品多岐の多様化や市場のニーズに合わせた迅速な対応が可能です。企業は新たな市場や顧客層に向けた製品展開をスムーズに進められます。

2.製品開発におけるリスク分散と技術とノウハウ活用

OEMを利用することで、製造過程のリスク(製造不良や生産ラインのトラブルなど)を外部に委託できます。これにより、依頼企業は販売やマーケティングなどの本業に集中でき、製造リスクの軽減と経営資源の効率的な活用が可能になります。そして、OEMメーカーは特定の技術やノウハウを有しているので、これらを活用して高品質な製品を生産します。依頼企業は、自社で技術開発を行っているので、OEMメーカーの専門知識を活用できるため、製品の品質向上と市場競争力の強化につなげることができます。


OEMと他の製造形態(ODM、PB)の違い

OEM(Original Equipment Maker)は他の製造形態、特にODM(Original Design Maker)やPB(プライベートブランド)とは異なる特性を持ち、それぞれが異なる役割を果たしています。

 OEM(相手先商標製造会社)

OEMは、量販ブランド向けに製品を製造する形態で、依頼企業(ブランド側)が製品の設計やブランド名を提供し、OEMメーカーが製造を担当します。販売は依頼企業が行いますが、製造過程や技術は主にOEMメーカーに任されます。

特徴:依頼企業がブランド戦略やマーケティングに集中できる一方、製造指導が行われにくいという懸念点もあります。また、OEMメーカー側が提案する製品を使用するためもあって、一定の柔軟性が求められます。

 ODM(オリジナルデザインメーカー)

ODMは、OEMに似ていますが、製品の設計や開発から製造までを全て受託企業が行う形態です。ブランド側は製品の仕様を細かく指示する必要がなく、ODMメーカーがゼロから製品を開発して提供します。

特徴:ブランド側が設計・開発コストを大幅に削減できるメリットがあり、特に技術力が不足している企業にとって、ODMは有用な選択肢です。一方、ブランド独自のカスタマイズが難しい場合もあります。企業の製造関与が少ないため、製品の独自性や差別化が薄くなることもあります。

 PB(プライベートブランド)

プライベートブランド(PB)は、小売業者が自社ブランド名で製品を販売する形態です。製造は他社(多くはOEMメーカー)に委託され、小売業者が製品の企画やデザインを監修しますが、製品自体はその小売業者の名前で販売されます。

特徴:PB製品は、小売業者が独自ブランドとして販売するため、顧客の認知度やリピート率が高くなるメリットがあります。OEMとは異なり、PBでは販売店のイメージに合った製品を提供することが求められ、OEMメーカーがその製品を完全にカスタマイズする場合が多いです。PB製品は、低価格で提供されることが多く、コスト競争力を持つ場合もあります。

OEMの種類

OEMには大きく分けて2つの形態があります。

 完成品や半完成品を相手先のブランド名で製造する

1つは、製造メーカー(OEMメーカー)が商品を企画し、ブランド側に提案する形態です。

「新商品を開発したのですが、あなたのブランド名で販売しませんか?」のように、商品のサンプルなどを企業に持ち込んで提案します。これは営業と近いものがあります。仮に、提案した商品がブランド側にとってピッタリであれば、ブランド側が自社で商品開発をおこなう手間が省けます。また、メーカーにとっても、依頼が増えることは収益アップにつながります。

 企業がメーカーに自社ブランド製品の製造を委託する

もう1つは、ブランド側が商品を企画し、メーカーに製造を依頼する形態です。

ブランド側で作りたい商品が決まっており、「この商品の製造をお願いします」とメーカーに生産工程を委託する形です。依頼企業(ブランド側)は、仕様書や原料、資材などを受託メーカーへ提供します。ときには、技術指導がおこなわれるケースもあり、役割分担をする「分業」ともいえるでしょう。

また、委託にあたっては、さらに2パターンの方式に分けられます。

・垂直的分業方式:商品の細やかな指導の必要がある場合

・水平的分業方式:メーカーの技術を信頼して依頼する

OEMのメリット

OEMのメリットとして、依頼企業と受託企業の2つの視点から見てみましょう。

依頼企業のOEMのメリット

 費用を抑えられる

依頼企業にとって、メリットの一つは初期費用を最小限に抑えながら製品の製造を行えることにあります。新商品の開発や販売を目指す際、もし既存の生産設備で対応できない場合、新しい設備への投資が必須となります。また、生産能力が増産のニーズに応えられない場合も、追加の設備投資が求められます。しかし、製造を既に設備を持つ他のメーカーに委託することで、これらの費用を大きく削減することが可能です。

 在庫管理のリスクを低下

OEMを活用することで、企業は在庫に関するリスクを減少させることが可能です。製品を市場に投入しようとする際に直面する主な課題の一つは、需要に見合わない製品の過剰在庫を抱え込むリスクです。

特に、市場に新しい独自商品を導入する場合、その製品がどれだけ売れるかを予測するのは困難であり、販売者は在庫を抱える可能性があります。しかし、小規模な注文から始められるOEMの選択肢を利用することで、製品の市場反応を見ながら徐々に生産量を調整することが可能になります。

 コア業務に集中が可能

製品の生産をOEMに依頼することで、企業は新製品の開発や主要なコア業務に専念することが可能になります。ビジネスの成長を促進するためには、商品の企画や宣伝活動など、ブランド価値を向上させる戦略が不可欠です。

市場の動向に応じた新商品の提供やマーケティング活動には、コストやリソースを継続的に配分し、数多くの確認と管理が必要です。一方で、信頼性の高いOEMパートナーを確保できれば、企業はコストを抑えながら、相談の上で安定した品質の製品を市場に提供することが可能となり、内部リソースを生産活動に集中させることができます。

受託企業のOEMのメリット

 在庫を持たないで良い

OEMの受託する際の利点の一つは、自社で物理的な製品在庫を保持せずに収益を得ることができる点です。依頼生産された製品は、依頼元によって全量が確実に買い取られるため、自社製品を市場に投入する際に発生する在庫の懸念がなくなります。

依頼元との関係を良好に保つことができれば、継続的に新しい製品の生産依頼を受ける機会が増えるでしょう。

 生産量の拡大が利益になる

依頼企業の製品が市場での売上を伸ばし、それに伴い製品の必要量が増加する場合、OEM企業にも生産量の拡大による恩恵があります。生産量を調整したり、生産プロセスを効率化するなどの取り組みが必要になるかもしれませんが、販売促進やマーケティング活動は依頼者が担当するため、売上増加による利益は受託側にも自然と還元されます。

高品質のOEM製品を提供することができれば、OEM企業は市場からの信頼を得て、長期にわたるパートナーシップを築くことが可能になるでしょう。

 ノウハウが蓄積する

受託企業にとって、プロジェクトを成功させることは、製造技術の知識と経験を深める大きなチャンスです。さまざまな種類のプロジェクトを手掛けることで、技術的ノウハウを数多く積み重ねることができ、これが将来のクライアントに対して信頼性をアピールする際に大きな強みとなります。また、新規顧客の獲得にも効果的であり、ロットの大小に関わらず、受託企業の対応力が評価されます。さらに、生産効率の向上や作業の効率化にも寄与し、限られたリソースで高い生産性を実現する力を養うことが可能になります。

OEMのデメリット

OEMのデメリットとして、依頼企業と受託側の2つの視点から見てみましょう。

依頼企業のOEMのデメリット

 受託側が競合になるリスクがある

自社ブランドを持つ受託企業を選ぶ際には、その企業が将来的に競合相手になる可能性を考慮する必要があります。そのため、理想的な製品を生産できる能力だけでなく、将来的に競合製品を生み出す可能性も含め、パートナーシップを結ぶ相手を選定する際には長期的な視野が求められます。

 原価が高くなり利益が減る

OEM契約において、原価が上昇することは利益の減少を招く一因となり得ます。自社での生産ではコスト削減が可能な箇所も、外部に生産プロセスを依頼することで避けられない固定費が発生し、数多くのコスト確認や管理が必要となります。

原材料費などのコストアップが発生すると、以前に享受できた利益が縮小することは避けがたい状況になります。ただ、OEMを提供する企業の中には、コスト管理を徹底し、製品企画からアフターサービスまでを含めた包括的な相談やサポートを提供するところもあります。

そのため、短期的な利益率のみに注目するのではなく、OEMによって得られる包括的なメリットを数値的にも総合的に評価し、確認と相談を重ねながら検討することが推奨されます。

 開発技術が育たない

OEMを利用した製品の生産では、材料の提供から設計、企画の準備に至るまで、多くの場合、依頼者が主体となって進めるポイントが多いです。一方で、OEMを担う企業が高度な技術や専門知識を持つ場合、依頼者と受託者の役割の違いを理解しつつ、生産プロセスを受託企業がリードすることも可能です。

依頼者が受託企業のさまざまな専門技術を利用して製品を生産することには大きなメリットがありますが、過度に依存すると、自社の技術開発が後回しにされ、成長機会を逸するリスクが生じることにも注意が必要です。特に、小規模企業がOEMに挑戦する際には、受託企業の支援を賢く活用しつつ、自社の技術力や知識の向上にも注力することが、希望する結果を得るために重要です。

受託企業のOEMのメリット

 オリジナルブランドが育たない

OEM受託企業が直面する課題の一つは、高品質な製品を市場に提供しても、自社のオリジナルブランドが成長するとは限らないことです。OEMによって製造された製品はクライアントのブランド名で販売されるため、製造元であるOEM企業の知名度は向上しにくい傾向にあります。

技術力が高くても、一般の消費者に対するブランド認知度は低いままであることが多く、自社ブランドの立ち上げや成長を目指す場合、強力な販売戦略やマーケティングの取り組みが不可欠になります。

 技術が流出する

受託企業が保持する特有の製造技術や専門知識が、委託する企業に漏れる可能性があります。特に、異なる専門領域を持つ企業同士が連携して作業を進める水平分業の状況では、製造技術や専門知識の外部への漏洩リスクがあり、結果として競合他社による類似品の製造につながることもあるかもしれません。

 利益が安定しない

OEM事業における一つの欠点は、委託される仕事の量が委託先企業の状況に大きく依存するため、利益が不安定になりがちであることです。受託する仕事の量が増えれば利益も増えますが、反対に売上が落ち込んだり、何らかの理由で販売計画が中止されるなどして、受託量が急減するリスクもあります。例えば、資料の提出が遅れたり、予想外の費用が発生することも、計画通りに行うことを難しくする要因となります。

そのため、一つの企業からの委託に過度に依存するのではなく、多様な企業とのパートナーシップを築き、質の高い製品を継続して供給することが重要です。多くの例に見られるように、費用を分散し、リスクを軽減することが長期的な成功につながります。

OEM導入時のポイントと注意点

信頼できるパートナーの選定基準

 品質、コスト、技術力を評価する方法

品質:OEMパートナーの製品品質を確認するには、過去の実績や顧客評価、品質管理体制(ISO認証など)の対象を調査します。また、サンプル製品を確認し、企業の品質基準に合うかを認識することが大切です。

コスト:必要だけでなく、維持費や追加のサービス料も含めた総コストを比較し、予算内でどの程度の品質が確保できるかを評価します。 コストは予定やロットサイズにも影響するため、柔軟なコスト調整が可能かも確認しましょう。

特に特殊な製品や高精度が求められる場合は、必要な技術力と設備の対応力を評価することが重要です。

 契約時に確認すべき事項

リスク管理:製造過程でのリスクや不良品対応のルールを明確にしておくことが大切です。製造ミスが発生した際のコスト負担や修正対応について契約に盛り込み、双方のリスクを軽減します。

情報保護:OEMでは製品設計や生産ノウハウが流出するリスクがあるため、秘密保持契約(NDA)を締結します。また、情報管理体制を確認し、適切な保護措置が取られる期限を確認することも重要です。

 成功のための長期的な戦略

品質管理:継続的な製品の品質管理が重要です。定期的な品質チェックや訪問監査などを実施し、製造品質の維持を確保します。また、製造工程の改善や製品の安定供給のために、OEM パートナーと密なコミュニケーションが必要です。

ブランド:OEMの活用は維持的な短期的な利益だけでなく、長期的なブランド価値の向上を目指すべきです。製品の一貫した品質や供給体制を確保し、顧客認識を忘れないようにするため、また、顧客のフィードバックを基に改善を行い、ブランドの強みを継続的に高める戦略的準備が重要です。


まとめ

この記事では、OEM(相手先商標製品製造)の基本的な概要から、依頼企業と工場側それぞれの視点での利点と治療法を解説しています。など幅広い戦略分野でOEMは活用されており、当初は下請けの形として運用され生産的でてきましたが、現在ではコスト削減や迅速な市場投入が可能な主要な生産として暫定的にされています。

OEMを導入することで、企業は自社の製造設備を必要とせず、自社ブランド製品の価格競争力を向上させることができます。これにより製造コストが削減され、リスク分散も図られるため、企業は人材をリソースをコア業務に集中させることが可能です。安全、品質管理やリスク、情報漏洩の問題が生じる可能性があるため、信頼できるパートナーを検討し、適切なリスク管理が検討されます。

また、OEMはODMやPBといった他の製造形態とは異なる特性を持ち、それぞれの生産戦略に応じた使い分けが重要です。OEMの導入を成功させるには、品質、コスト、技術力を基準にパートナーとの長期的な成功には、継続的な品質管理とブランド維持のための戦略的運用が必要です。


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