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冷凍食品とは?【食品工場の用語解説】


今や日本の調理に欠かせないのが冷凍食品となっています。食品業界で働く上ではこの冷凍食品について一般的な知識を理解しておくことが大切です。この記事では冷凍食品とは何か、凍結法、冷凍技術、歴史、区分、保管温度、賞味期限を解説します。

冷凍食品とは?

冷凍食品とは、新鮮な食材をあらかじめ冷凍し、その鮮度や栄養を保ったまま保存するための食品です。冷凍庫に入れて保存することで食材を長期間保存でき、購入時の鮮度を維持します。冷蔵庫での保存とは異なり、冷凍食品は鮮度を長期間保つことができ、簡単な調理方法で手軽に利用できるのが特徴です。


冷凍食品の定義


日本冷凍食品協会の自主的取扱基準では、「前処理を施した上で、品温を零下18℃以下に保つために急速凍結し、消費者(大口需要者を含む)への販売を目的として通常包装される食品」を冷凍食品と定義しています。

この定義は、「前処理」、「急速凍結」、「適切な包装」、「厳しい温度管理」の重要性を示しています。一方で、食品衛生法は生菌数、加工、保存の基準を設けており、冷凍食品の保存に関しては零下15℃以下を規定しています。

冷凍食品は、以下の4つの基準を満たしたものです。


前処理

素材を選び、清潔に洗浄し、食べられない部分(例えば魚の場合は頭や内臓、骨、ひれ)を取り除くなど、事前に処理を施しています。これには、切り身や三枚おろし、パン粉をつけた魚フライのように調理しやすく加工する作業などもあります。


急速冷凍

食品を急速に凍結し、組織が壊れ品質が低下するのを防ぎます。低温で迅速に行われます。


適切な包装

食品が汚染されたり、形が崩れたりしないように、適切に包装されています。包装材には使用方法や調理手順など、重要な情報が記載されています。


厳しい温度管理

製造から貯蔵、輸送、配送、販売に至るまでの全過程で、食品を-18℃以下の温度で一貫して保管します。


冷凍品とは


冷凍魚、冷凍肉、冷凍果実、冷凍卵などの加工素材は「冷凍品」と呼ばれ、これらは「冷凍食品」とは区別されています。これら冷凍品は、食品加工の基材として使用されることが多く、その性質上、冷凍食品とは異なる取り扱いを受けることが明示されています。

冷凍食品の凍結法

冷凍食品の品質は、技術の進化に伴い大きく向上しました。従来は「緩慢凍結法」と呼ばれる方法が主流で、この方法では食材をゆっくりと凍結させていました。しかし、この方法では氷の結晶が大きくなり、食品内部の細胞が損傷しやすく、結果として解凍時に品質が劣化することが課題でした。

この課題を解決するために導入されたのが「急速凍結法」です。急速凍結法では、食材を短時間で一気に凍結させることで、氷の結晶が非常に小さくなり、食品内部の細胞が損傷しにくくなります。これにより、冷凍食品の風味や食感、栄養価がより新鮮な状態に近い形で保持されるようになりました。急速凍結法の導入により、冷凍食品の品質が飛躍的に向上し、消費者にとっても、より高品質で美味しい冷凍食品を手に入れることが可能になりました。


「緩慢凍結法」


この二つの方法の違いは、解凍時に発生するドリップ(食品の水分)の量です。緩慢凍結法では、食品がゆっくりと凍るために氷結晶が大きくなり、細胞壁を破壊してしまいます。これにより、解凍時に多くのドリップが失われ、結果として食品のうまみの流失、食感の劣化、形の変形が生じます。


「急速凍結法」


対照的に、急速凍結法では氷結晶が非常に小さく形成され、細胞の破壊がずっと少ないため、ドリップの損失が格段に減少します。


冷凍食品の冷凍技術

凍結技術には様々な方法が存在し、主に以下のようなものがあります。


接触板式凍結法(コンタクト凍結法)


食品を上下の冷却板に挟み込み、金属板を通じて急速に熱を奪うことで凍結させる方法です。この凍結法は、熱伝導が効率的で食品を短時間で均一に凍結できるため、品質の劣化を最小限に抑えられるのが特徴です。特に、魚の切り身や肉のブロックなど、平らで形状が均一な食品に適しており、工業的な大量生産でも効率的に利用されています。ただし、不規則な形状の食品やサイズの大きい食品には対応しにくく、初期設備コストが高くなる可能性もあるため、導入時にはコストとメリットのバランスを考慮する必要があります。


エアーブラスト凍結法


強力な冷気を食品に直接吹き付けることで急速に凍結させる方法です。この凍結法では、冷凍庫内で冷風を循環させ、食品全体を均一に冷却します。食品が風に直接さらされるため、表面から中心部まで効率的に凍結され、品質が高く保たれます。形状や大きさが異なる食品にも対応しやすく、さまざまな食品の凍結に適していますが、エネルギー消費が大きく、運用コストが高くなる場合があります。それでも、汎用性の高さから多くの冷凍食品工場で採用されています。


浸漬式凍結法


食品を液体の冷媒に直接浸して凍結させる方法です。この方法では、食品が冷媒と直接接触することで熱が素早く奪われ、急速に凍結されます。液体による均一な冷却が可能なため、食品全体が均一に凍結され、品質を高く保つことができます。特に形状が複雑な食品や、小さな食品の凍結に適しており、短時間で効率的に処理が可能です。ただし、冷媒の管理や処理にコストがかかることがあり、使用する冷媒の安全性や環境への影響も考慮する必要があります。


液化ガスによる凍結法


液体窒素や液体二酸化炭素などの液化ガスを使用して食品を急速に凍結させる方法です。この方法では、液化ガスが食品に直接噴霧されるか、食品が液化ガスに浸されることで、極低温の環境下で瞬時に凍結が行われます。非常に短時間で凍結できるため、食品の細胞破壊を最小限に抑え、品質や食感、栄養価を高く維持できます。特に高品質が求められる食品や、迅速な凍結が必要な場合に適していますが、液化ガスの取り扱いやコスト面での考慮が必要です。


冷凍食品の歴史


冷凍食品の始まり


食品の凍結保存は、エスキモーが自然の寒さを利用して食料を保存する古い知恵から始まりました。人工的に低温を作り出し食品を凍結させる技術が登場したのは16世紀のことです。1834年にはイギリスで最初の冷凍機が開発され、シャルル・テリエによって牛肉や羊肉の冷凍実験が進められました。1877年〜1878年には、フランスとアルゼンチン間での冷凍輸送が試みられ、1880年頃にはオーストラリアやニュージーランドからイギリスやフランスへの畜肉の冷凍輸送が実用化しました。

魚類の冷凍は1860年代にアメリカで開発され、イギリスへのサケの冷凍輸送に成功しました。第一次世界大戦は冷凍技術の発展を加速させ、従来の緩慢凍結法とは異なる急速凍結法が開発され、高品質な冷凍食品の製造が可能になりました。


日本での冷凍食品


日本での冷凍食品の歴史は、1909年に中原孝太がアメリカから帰国後、冷凍魚を製造したことに始まります。事業として冷凍食品の製造をスタートさせたのは葛原猪平で、1920年に北海道で冷凍魚の製造を行いました。

1935年には東京と大阪のデパートで冷凍魚が販売されましたが、成功には至りませんでした。この時期の日本では緩慢凍結法が主流でしたが、第二次世界大戦後に冷凍技術が改良され、学校給食やレストラン向け業務用として冷凍食品が普及し始め、1960年代からは一般家庭でも使用されるようになりました。


冷凍食品の区分

冷凍食品は、それらがどのように利用されるか、またはどの種類の食品であるかに基づいて、さまざまなカテゴリーに分類されます。主な分類は水産冷凍食品、農産冷凍食品、調理冷凍食品、冷凍食肉製品などがあります。さらに、これらの食品は食べる際に加熱が必要かどうかによっても細分化されます。


無加熱摂取冷凍食品


無加熱摂取冷凍食品とは、食べる前に加熱する必要がなく、そのまま消費できる冷凍食品のことを指します。このタイプの冷凍食品は、凍結前に加熱されているか否かにかかわらず、解凍後すぐに食べることができるのが特徴です。


例えば、フローズンケーキや冷凍果実などが無加熱摂取冷凍食品に該当します。これらの食品は、特にデザートやスナックとして人気があり、手軽に楽しめるため、家庭や飲食店などで幅広く利用されています。また、保存期間が長く、必要なときにすぐに食べられる利便性から、忙しい日常生活や、急な来客時にも重宝されています。


生食用冷凍鮮魚介類


生食用冷凍鮮魚介類とは、刺身やむき身など、生で食べられるように特別な処理が施された鮮魚や魚介類を冷凍した製品のことを指します。これらの食品は、鮮度や品質を保つために、急速凍結技術を用いて凍結されており、解凍後も新鮮な状態でそのまま生食が可能です。


例えば、冷凍された刺身用のマグロやサーモン、冷凍むきエビなどが該当します。これらの製品は、厳しい衛生管理のもとで加工・凍結されており、消費者が安心して生で食べられるように製造されています。また、生食用冷凍鮮魚介類は、食材の旬を問わず一年中楽しむことができるため、家庭だけでなく、レストランや寿司店などの飲食業界でも広く利用されています。これにより、消費者は手軽に高品質な魚介類を楽しむことができ、調理の手間を省くことができます。


加熱後摂取冷凍食品(凍結前未加熱)


冷凍食品とは、食べる前に加熱が必要で、消費者が調理する際に加熱調理が必須となる食品のことを指します。これらの食品は、凍結前には未加熱の状態であるか、もしくは一部のみが加熱されている場合があります。


例えば、衣をつけたフライ物や冷凍餃子が該当します。これらの食品は、家庭で揚げたり焼いたりすることで、外側はカリッと、中はジューシーに仕上げられるように設計されています。冷凍状態では長期間保存が可能であり、必要な時にすぐに調理できる利便性があります。また、調理過程でのアレンジがしやすいため、食卓にバリエーションをもたらすことができます。特に忙しい家庭や、簡単に本格的な料理を楽しみたいと考える消費者にとって、これらの加熱が必要な冷凍食品は重宝されています。


加熱後摂取冷凍食品(凍結前加熱済)


加熱後摂取冷凍食品とは、凍結前に完全に加熱調理が施されている食品でありながら、さらに食べる前にも再度加熱が必要な冷凍食品です。これらの食品は、製造過程で一度完全に加熱されており、消費者が安心して食べられる状態に加工されていますが、最適な風味や食感を楽しむためには、食べる直前にもう一度加熱調理を行うことが求められます。


例えば、冷凍フライドポテトや冷凍鰻のかば焼き等が該当します。フライドポテトの場合、家庭で揚げ直すことで、外側がカリッとした食感に仕上がり、鰻のかば焼きは再度加熱することで、ふっくらとした柔らかさやタレの風味が一層引き立ちます。これらの食品は、調理の手間を省きつつも、レストランのようなクオリティを家庭で手軽に再現できることから、多くの消費者に支持されています。また、保存が利くため、食べたい時にすぐに用意できる便利さも特徴です。


業界の定める冷凍食品の保管温度

冷凍食品の保存と流通に関しては、業界内でマイナス18℃以下の保持が自主的に設定されている「冷凍食品自主的取扱基準」と、食品衛生法によるマイナス15℃以下の基準という、二つの異なる温度基準が存在します。この差異は、それぞれの基準が重視する観点の違いに起因しています。


食品衛生法は、食品の安全性を確保することを最優先とし、有害微生物の増殖を防ぐためにマイナス15℃以下を基準温度としています。この基準は、食品が安全に消費されることを目的としており、特に「おいしさを長期間保持する」という観点で設けられたものではありません。一方、一般社団法人日本冷凍食品協会によるマイナス18℃以下という基準は、品質保持の観点から設定されています。この温度では、食品の品質が約1年間維持されるだけでなく、細菌の増殖、酸化、酵素による変化が抑制され、食品のおいしさも保たれます。さらに、この基準は食品の国際規格である「コーデックス(国際食品規格委員会)」における保管温度とも一致しています。

これらの基準は、安全性だけでなく品質の維持という観点からも綿密に考慮され、設定されています。その結果、技術的な進歩とともに、調理現場や家庭で欠かせない高品質でおいしい冷凍食品が提供されるようになりました。


冷凍食品の賞味期限

賞味期限は、製造者が科学的および合理的な根拠に基づいて適切に決定する必要があります。賞味期限を設定する際には、製造者は保存試験を実施し、製品が目標とする品質を維持できる期間を特定します。この試験は、-18℃以下の条件下で行われ、官能試験(製品の味、香り、色などの感覚的評価)、細菌試験、および必要に応じて理化学試験(化学的、物理的性質の分析)があります。これらの試験結果をもとに、製造者は安全率を考慮した賞味期限を設定します。

冷凍食品の場合、3ヶ月以上長期間保存が可能であれば、賞味期限を年月のみで表示することが認められています。これは、冷凍状態での食品はその品質を比較的長期間維持できるためです。

輸入食品についても、国内で生産された食品と同様の基準が適用され、賞味期限の表示は製造者あるいは輸入者が責任をもって行う必要があります。さらに、製造日からおおむね5日以内に品質が急激に低下する可能性がある食品には「消費期限」を設けることが義務付けられています。これは、消費者が安全で品質の高い食品を選ぶことを支援し、食品の安全管理を強化するための措置です。


まとめ

冷凍食品とは?

冷凍食品とは冷凍加工して長期の保存性をもたせた食品です。

冷凍品とは?

冷凍魚、冷凍肉、冷凍果実、冷凍卵などの加工素材のこと。

冷凍食品の凍結法とは?

「緩慢凍結法」

「急速凍結法」

冷凍食品の冷凍技術とは?

接触板式凍結法(コンタクト凍結法)

エアーブラスト凍結法

浸漬式凍結法

液化ガスによる凍結法

冷凍食品の歴史とは?

食品の凍結保存は、エスキモーが自然の寒さを利用して食料を保存する古い知恵から始まりました。日本での冷凍食品の歴史は、1909年に中原孝太がアメリカから帰国後、冷凍魚を製造したことに始まります。

冷凍食品の区分とは?

・無加熱摂取冷凍食品とは、食べる前に加熱する必要がない冷凍食品

・生食用冷凍鮮魚介類とは、刺身やむき身など、生で食べられるように処理された鮮魚や魚介類の冷凍品

・加熱後摂取冷凍食品とは、食べる前に加熱が必要で、凍結前には未加熱または一部加熱されていた食品

・加熱後摂取冷凍食品とは、凍結前に完全に加熱されており、さらに食べる前にも加熱する必要がある食品

業界の定める冷凍食品の保管温度とは?

冷凍食品の保存と流通に関しては、業界内でマイナス18℃以下の保持が自主的に設定されている「冷凍食品自主的取扱基準」と、食品衛生法によるマイナス15℃以下の基準という、二つの異なる温度基準が存在します。この差異は、それぞれの基準が重視する観点の違いに起因しています。

冷凍食品の賞味期限とは?

賞味期限は、製造者が科学的および合理的な根拠に基づいて適切に決定する必要があります。


冷凍食品は、新鮮な食材を急速に冷凍し、その鮮度や栄養を保ったまま長期間保存できるようにした食品です。冷凍することで微生物の活動を抑え、食材を劣化させずに保存できるため、野菜、肉、魚介類、調理済みの料理など、さまざまな種類の食品が冷凍食品として利用されています。

冷凍食品の品質向上には、技術の進化が大きく貢献しています。従来の緩慢凍結法から急速凍結法への移行により、食品内部の細胞損傷を防ぎ、風味や食感、栄養価を新鮮な状態に近いまま保つことができるようになりました。また、凍結方法にはさまざまな種類があります。例えば、エアーブラスト凍結法は強力な冷気を食品に直接吹き付け、均一に凍結させる方法で、汎用性が高く、さまざまな食品に対応できます。浸漬式凍結法は、液体冷媒に食品を浸して急速に凍結する方法で、形状が複雑な食品にも対応可能です。液化ガスによる凍結法は、液体窒素や液体二酸化炭素を使用して食品を瞬時に凍結させ、品質を高く保つことができる方法です。


冷凍食品は、保存期間が長く、調理が簡単であるため、現代のライフスタイルに非常に適しており、日常生活で広く利用されています。しかし、冷凍食品の品質を維持するためには、適切な凍結方法の選定や保存方法が重要です。この記事では、冷凍食品の基本的な定義から、品質向上のための技術、凍結方法の種類に至るまで、冷凍食品に関する幅広い知識を解説しました。


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