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食品工場のスマートファクトリーとは?5つの活用例・導入課題・進め方を解説コラム


食品工場のスマートファクトリー化とは?現状・課題・導入事例を解説【2026年版】 

今回は、食品工場におけるスマートファクトリー化の現状や導入されている技術、進めるうえでの課題について解説します。

人手不足や原材料価格の高騰、多品種少量生産への対応など、食品製造業を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした課題を解決する方法として注目されているのが、AI、IoT、ロボット、画像認識、クラウドシステムなどを活用したスマートファクトリー化です。


スマートファクトリーとは

  • スマートファクトリーとは、工場内の設備やセンサー、システム、人がデータによってつながり、収集した情報を生産性向上や品質管理、設備保全などに活用する工場を指します。
  • 単にロボットや自動化設備を導入した工場ではありません。
  • 設備の稼働状況、生産数量、不良発生、停止時間、温度、重量、エネルギー使用量などのデータを収集し、分析結果を改善活動や設備制御に反映することが重要です。
  • 経済産業省も、IoT機器やクラウド、AIなどを活用して生産性、設備稼働率、品質、保守性を高める取り組みとして、工場のスマート化に関するガイドラインを整備しています。

食品工場でスマートファクトリー化が求められる背景 

深刻化する人手不足 

食品製造業は、約128万人の雇用を支える重要な産業です。一方、食品製造事業者の97.6%が従業者数300人未満の中小・零細企業であり、常用雇用者の約半数を派遣社員、パート、アルバイトなどが占めています。

農林水産省の資料によると、2024年の食品製造業の有効求人倍率は2.89倍で、全産業平均の1.31倍を大きく上回っています。地方ではさらに求人倍率が高い地域もあり、人材を募集しても十分に確保できない食品工場が少なくありません。

また、国立社会保障・人口問題研究所は、2020年に1億2,615万人だった日本の総人口が、2070年には8,700万人まで減少すると推計しています。今後も生産年齢人口の減少が見込まれるため、人員の増加だけに頼らない生産体制づくりが必要です。


労働生産性の向上 

食品工場では、原材料の投入、盛り付け、検品、箱詰め、清掃など、人の手を必要とする工程が多く残っています。

農林水産省の資料では、食品製造業の労働生産性は711万円とされており、特に弁当・惣菜、野菜缶詰、めん類、パン・菓子などの製造業では、生産性の向上が課題として挙げられています。

こうした状況を受け、政府は「省力化投資促進プラン(食品製造業)」を策定し、2029年度までに食品製造業の労働生産性を2024年度比で24%向上させる目標を掲げています。


原材料価格と調達リスクへの対応 

食品工場では、人件費だけでなく、原材料費、包装資材費、電気・ガス代、物流費などの上昇も経営に影響します。

農林水産省が2026年に公表した資料では、外国産農林水産物を利用する食品製造業の63.5%が、今後の調達に懸念があると回答しています。特に穀類・豆類、食肉、水産物などで懸念が高くなっています。

国産原材料についても、「価格変動が大きい」「十分な量を確保できない」といった課題があります。スマートファクトリー化は製造工程だけでなく、在庫管理、原材料の使用量管理、歩留まり改善、需要予測にも活用できます。


食品工場におけるスマートファクトリー化の例 


1.製造・包装・搬送工程の自動化 

計量、充填、包装、箱詰め、パレタイズ、搬送などの定型作業では、自動化設備やロボットの導入が進められています。

人が行っていた重量物の運搬や繰り返し作業を設備に置き換えることで、省人化だけでなく、作業者の身体的負担の軽減や作業品質の安定にもつながります。

ただし、食品は形状や硬さ、大きさが一定ではないため、製品に合わせたハンドリング技術や設備の調整が必要です。


2.IoTによる設備稼働状況の見える化 

既存設備にセンサーや電流計、通信機器を取り付け、稼働時間、停止時間、生産数量、温度、圧力、電力使用量などを自動収集します。

これまで手書きで記録していた情報をデジタル化することで、停止が多い設備や生産性が低下する時間帯を確認しやすくなります。

重要なのは、データを集めるだけで終わらせないことです。停止理由の分類や改善前後の比較を行い、設備改善や人員配置の見直しにつなげる必要があります。


3.AI・画像認識による検査 

AIを活用した画像検査では、製品の形状不良、焼き色、異物、欠け、印字、ラベル、包装状態などをカメラで確認します。

従来のルールベースの画像処理では判定が難しかった、個体差の大きい食品にも対応できる可能性があります。

ただし、AIを導入すればすぐに検査員を完全に置き換えられるわけではありません。学習用画像の収集、判定基準の明確化、誤判定時の対応、不良品の排出確認などを含めた運用設計が必要です。


4.需要予測と生産計画の最適化 

販売実績、曜日、季節、天候、販促情報、受注状況などを利用し、需要量を予測する取り組みも進んでいます。

予測結果を生産計画や原材料発注に反映することで、過剰生産、欠品、廃棄、急な残業などを抑えられる可能性があります。

食品工場では賞味期限や消費期限も考慮しなければならないため、一般的な製造業以上に、需要予測と生産計画の連携が重要です。


5.品質情報と製造履歴のデジタル管理 

原材料ロット、製造条件、温度記録、検査結果、使用設備、作業日時などを関連付けて管理することで、トレーサビリティを強化できます。

異常が発生した場合に、対象となる製品や原材料を早く特定できるほか、品質不良が発生しやすい条件の分析にも活用できます。



食品工場のスマートファクトリー化における課題 


1.導入目的と投資効果が不明確 

「人手不足だからロボットを導入する」「DXが必要だからシステムを導入する」という考えだけでは、十分な効果が得られない可能性があります。

まずは、人手が不足している工程、停止時間が長い設備、不良や廃棄が多い製品などを把握し、解決する課題を明確にする必要があります。

設備費だけでなく、設計費、工事費、教育費、保守費、消耗品費などを含め、導入後の効果を試算することも重要です。


2.既存設備とシステムを接続しにくい 

食品工場では、メーカーや導入時期が異なる設備が混在しています。

古い設備には通信機能がなく、設備ごとにデータ形式も異なるため、工場全体の情報を一つのシステムに集約できないことがあります。

すべての設備を一度に更新するのではなく、後付けセンサーや稼働監視装置を利用し、必要なデータから段階的に取得する方法もあります。


3.食品特有の環境への対応 

食品工場では、水、蒸気、油、粉体、低温、高温、洗剤などが使用されます。

一般的な工場向けのセンサーやロボットでは、洗浄や結露、腐食に耐えられない場合があります。設備を選定する際は、防水性、洗浄性、衛生性、異物混入防止、使用温度などを確認しなければなりません。


4.デジタル技術を活用する人材の不足 

スマートファクトリー化には、設備、製造、品質管理、情報システム、経営など、複数部門の連携が必要です。

システム導入を外部企業に任せきりにすると、導入後に設定変更や改善ができなくなる可能性があります。外部の設備メーカーやシステム会社と連携しながら、社内にもデータを確認し、改善に活用できる人材を育てることが重要です。


5.サイバーセキュリティ対策 

設備をネットワークやクラウドに接続すると、不正アクセス、マルウェア感染、設定変更、情報漏えいなどのリスクが生じます。

生産設備が停止すれば、製造や出荷に大きな影響が出る可能性があります。製造レシピ、品質記録、生産計画などの情報管理も必要です。

経済産業省は中小規模の製造事業者向けに、工場セキュリティの重要性や取り組みの始め方を解説した資料を公開しています。設備やシステムの導入時には、ネットワークの分離、アクセス権限、バックアップ、更新管理、事故発生時の連絡体制なども検討しましょう。


スマートファクトリー化の進め方 

食品工場のスマートファクトリー化は、一度に工場全体を変えるのではなく、次の順番で段階的に進めることが重要です。


1.現場の課題やボトルネックを洗い出す

2.生産量、作業時間、停止時間、不良率などの現状を数値化する

3.効果が確認しやすい工程で小規模に導入する

4.導入前後の効果を検証し、作業手順や教育内容を整える

5.効果が確認できた仕組みを他工程や他工場へ展開する

ロボットやAIの導入そのものを目的にするのではなく、「どの課題を、どの程度改善するのか」を明確にすることが成功のポイントです。


活用できる公的支援 

農林水産省は、食品企業の生産性向上を支援する「食品企業生産性向上フォーラム」を運営しています。生産性向上に関する相談、生産技術人材の育成、補助金・税制情報の提供などが行われています。

また、中小企業庁では、中小企業省力化投資補助事業など、省力化設備やシステム導入を支援する制度を実施しています。公募時期や対象経費、補助率は変更されるため、導入を検討する際は必ず最新の公募要領を確認してください。

まとめ


食品工場のスマートファクトリー化は、単なる設備の自動化ではありません。

設備や製造工程から収集したデータを活用し、人手不足への対応、生産性向上、品質の安定、食品ロス削減、設備停止の防止などにつなげる取り組みです。

一方で、初期投資、既存設備との接続、食品特有の製造環境、人材育成、サイバーセキュリティなどの課題があります。

まずは工場全体の完全自動化を目指すのではなく、負担が大きい工程や効果を確認しやすい工程から着手し、検証と改善を繰り返しながら対象範囲を広げることが重要です。


参考文献 

省力化投資促進プラン ―食品製造業―令和7年6月13日 農林水産省

(参照2026年7月30日)


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