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食品工場における滅菌・殺菌・除菌・消毒・抗菌とは?コラム
今回は食品工場で使う用語 滅菌・殺菌・除菌・消毒・抗菌について解説・具体例などを解説していきます。
食品工場における滅菌・殺菌・除菌・消毒・抗菌とは?
食品工場では、製品の安全性を確保し、品質を維持するために、滅菌、殺菌、除菌、消毒、抗菌などの工程が重要な役割を果たします。それぞれの言葉は目的に応じて使い分けられています。それぞれの言葉の意味を正しい情報を基に理解し、商品を安全に生産できるようにしましょう。
言葉の意味の違い
1.滅菌(Sterilization)
滅菌とは、微生物(細菌やウイルス、カビなど)を完全に殺滅または除去することです。滅菌された環境では、微生物が存在しない状態が保たれます。微生物の対象は病原性があるかどうかを問わず、細菌、真菌、寄生虫、ウイルスなどをあらゆる種類の微生物を含みます。
食品工場では、滅菌装置や高温・高圧の蒸気を利用して設備や器具の滅菌を行うことが一般的です。滅菌は特に、製品の品質や衛生が重要な食品製造や医薬品工場で重視されます。
例:オートクレーブによる蒸気滅菌やガンマ線滅菌
2.殺菌(Disinfection)
殺菌は、特定の微生物を殺す行為ですが、対象や程度に関する定義はありません。殺菌は、病原菌や腐敗菌など有害な微生物を減少させる目的で行われます。感染症対策としての病原体の除去、食品の鮮度保持など殺菌を行う目的によって、何をどの程度死滅させるのかが変わります。
「殺菌」という表現を使うことができる製品は医療機器・医薬品・医薬部外品など薬機法の対象のみ限定されており、洗剤などには使えません。
例:熱処理による牛乳や缶詰の殺菌(パスチャライゼーション)
3.除菌(Sanitization)
除菌は、物理的または化学的な方法で、ある物質や空間などから増減可能な微生物を減少させる行為です。完全な滅菌とは異なり、一定数の微生物が残る可能性はありますが、食品工場では製造環境を清潔に保つために頻繁に行われます。一般的には、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒剤が使われます。
例:製造ラインの機械や作業台の表面の除菌
4.消毒(Disinfection)
消毒は、生物や物に付着している病原菌(病気を引き起こす細菌やウイルス)を害のないまで死滅させたり、不活性化させたりすることで、感染リスクを低減する行為です。特に、人に対する感染リスクがある微生物を抑えるため、食品工場では手洗い消毒や設備の消毒が徹底されています。消毒剤としてはアルコールや塩素系薬剤がよく使用されます。
例:作業者の手指や調理器具の消毒
5.抗菌(Antimicrobial)
抗菌は、微生物の増殖を抑制することを指し、微生物の活動を止めたり、増殖速度を遅くしたりしますが、完全に殺すわけではありません。抗菌製品やコーティングが多く使われ、特に食品工場内の設備や器具の表面に使用されることがあります。
例:抗菌加工された食品トレイや工具
菌の種類
食品工場や衛生管理において、微生物(菌)の種類を理解することは、適切な対策を講じるために非常に重要です。ここでは、主な菌の種類について、食品に関わるケースを中心に説明します。
1.細菌(Bacteria)
細菌は、単細胞の微生物であり、自然界に広く存在します。食品に関わる細菌は、有害な細菌(病原菌)と無害な細菌(有用菌)の両方が存在します。
■病原菌: 人体に有害で、食中毒や感染症を引き起こすことがあります。
サルモネラ菌(Salmonella): 鶏肉や卵などから感染することがあり、食中毒の原因となります。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus): 手指や鼻の粘膜に存在し、食品に接触することで食中毒を引き起こすことがあります。
病原性大腸菌(E. coli O157): 肉や野菜を介して感染し、重篤な腸炎を引き起こす可能性があります。
リステリア菌(Listeria monocytogenes): チーズや冷蔵食品で増殖しやすく、妊婦や免疫が低下している人に重篤な感染症を引き起こすことがあります。
■有用菌: 食品の発酵や保存に役立つ細菌です。
乳酸菌(Lactobacillus): ヨーグルトや漬物の発酵に関与し、腸内環境を整える健康効果があります。
酢酸菌(Acetobacter): 酢の製造に利用される細菌です。
2. 真菌(Fungi)
真菌は、細菌よりも大きな微生物で、カビや酵母が含まれます。食品においては、腐敗やカビの発生の原因となることがありますが、発酵食品の製造にも重要な役割を果たします。
■カビ(Mold): 酸素を必要とする真菌で、食品の表面に繁殖することがあります。特定のカビは有害なマイコトキシン(カビ毒)を生成し、これが食品に混入すると健康被害を引き起こす可能性があります。
アスペルギルス属(Aspergillus): 一部の種は発酵食品(味噌、醤油)に利用されますが、他の種はカビ毒を生成することがあります。
ペニシリウム属(Penicillium): 青カビを形成し、食材の腐敗の原因となりますが、チーズ(ブルーチーズ)の熟成に利用されることもあります。
■酵母(Yeast): 酵母は発酵に関わり、パン、ビール、ワインなどの製造に利用されます。アルコールや二酸化炭素を生成するため、発酵食品に重要な役割を果たします。
サッカロマイセス属(Saccharomyces): パンやビール、ワインの発酵に使われる代表的な酵母です。
3. ウイルス(Virus)
ウイルスは細菌や真菌とは異なり、生物の細胞に寄生しなければ増殖できません。食品を介して感染することがあり、特に加工食品や外食産業における衛生管理が重要です。
ノロウイルス(Norovirus): 生牡蠣や汚染された水などから感染し、急性胃腸炎を引き起こす原因となります。少量のウイルスで感染するため、特に衛生管理が重要です。
A型肝炎ウイルス(Hepatitis A Virus): 汚染された食物や水を通じて感染し、肝炎を引き起こします。熱処理によって不活性化されます。
4. 芽胞形成菌(Spore-forming Bacteria)
芽胞形成菌は、極めて耐久性のある構造を形成し、厳しい環境下でも生き残ることができます。芽胞は熱、乾燥、化学薬品に対して非常に強いため、食品製造において特別な管理が必要です。
クロストリジウム属(Clostridium): 代表的な芽胞形成菌で、酸素がない環境で増殖します。ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は猛毒のボツリヌス毒素を産生し、食品中で増殖することがあります。
バチルス属(Bacillus): 土壌に広く分布し、芽胞を形成することで耐熱性を持つ。Bacillus cereusは食品中で増殖し、食中毒を引き起こすことがあります。
5. 原虫(Protozoa)
原虫は、単細胞の寄生生物で、主に汚染された水や食品を介して感染します。
クリプトスポリジウム(Cryptosporidium): 汚染された水や食品を介して感染し、下痢などの胃腸障害を引き起こす寄生虫です。
ジアルジア(Giardia): 汚染された水や食品を介して感染し、消化器症状を引き起こします。
菌を死滅させるかさせないか
「滅菌」「殺菌」「除菌」「消毒」「抗菌」、この5つの用語には、定義上微生物を殺すものと殺さないものがあります。
「滅菌」「殺菌」の2つは、程度の差はあれ微生物を殺して減少させるときに使用します。
「除菌」「消毒」の2つは、微生物の数を減らしたり毒性をなくしたりすることをさしており、その手段としては殺して数を減らすものも、拭き取って取り去るだけのものも含まれており、必ずしも殺すとは限りません。
「抗菌」は増殖を防ぐことであり、今いる菌を殺すかどうかは関係がありません。
まとめ
食品工場では、これらの微生物の作用を正しく理解し、適切な衛生管理や加工処理を行うことが重要です。特に、食品に関連する細菌やウイルスの管理は食中毒防止の観点から不可欠であり、カビや酵母は発酵食品の製造において必要不可欠ですが、不要な汚染を防ぐための環境管理も求められます。
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