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製造業における省人化とは?コラム



日本では近年少子高齢化が進み、今後も国内における労働者人口の減少が深刻な問題となっています。実際、2008年のピーク時より、13年連続減少し続けています。今後多くの企業が、人手不足や優秀な人材の確保、技術・ノウハウの継承、人件費高騰などの「人」にまつわる課題の解決を迫られることになります。これらの課題に対する有効な対策の1つが、製造業DXによる省人化です。

今回の記事では、製造業における省人化の意味や必要性、実現方法、またそれに伴う課題や問題点について詳しく解説していきます。

省人化とは?

省人化とは、企業や産業において、従来は人手で行っていた業務や作業を自動化する取り組みのことです。これにより、必要とされる労働力を削減しつつ、生産性や効率性を向上させることを目指します。

省人化と省力化の違い

似た言葉で「省人化」と「省力化」があります。ですが、それぞれ対象や目的に若干の違いがあります。

省人化は人手を減らす事に重点をおいた取り組みです。労働力不足の解消やコスト削減を目指し、人の作業を自動化したり、ロボットやAIなどの技術を導入することで、必要な人数を減らすまたは、最小限にすることが目的です。

一方省力化は、作業そのものにかかる作業量を減らす事に重点をおいた取り組みのことを指します。作業の効率化を進め、作業にかかる時間や負荷を軽減することが目的です。労働者が少ない力で多くの作業をこなせるように、例えば、重い荷物を運ぶ作業で、フォークリフトを使用することで作業者の体力的負担を軽減するなどがあります。

省人化の歴史

省人化の歴史は、産業の進化や技術革新とともにさまざまなサービスが提供されてきた過程でもあります。産業革命以降は作業の効率化や人手削減を目的に、さまざまな技術導入が進められ、多くのケースで成功を収めてきました。今後も省人化には多くの可能性が秘められています。

 産業革命

産業革命は省人化の大きな転換点でした。この時期、蒸気機関や機械の発展により、手作業が主流だった生産プロセスが機械化され、労働生産性が大幅に向上しました。特に、繊維産業や製鉄業において機械化が進み、大量生産が可能になりました。この機械化が省人化の始まりといえます。

 20世紀

20世紀に入ると、電気技術やモーターの普及が進み、さらなる自動化が促進されました。特に、ベルトコンベアシステムが、自動車製造において人間の作業を機械的な流れ作業に置き換え、省人化の象徴的な省人化の象徴的なソリューションとして世界に広まりました。このシステムは、生産速度を大きく向上させ、作業者の数を減らす効果をもたらしました。

 1950年代以降

1950年代以降、コンピューター技術が発展し、デジタル産業が新たにでてきました。現場では自動制御システムが導入され、複雑な加工や精密な作業が自動化されるようになりました。また、1970年代には、産業用ロボットが登場し、自動車産業などの重工業を中心に生産ラインの自動化が加速しました。特に溶接や組立などの危険で反復的な作業がロボットによって代替されました。この時期、省人化の進展は、労働者の安全性向上や作業の効率化にもつながっています。

 2000年代以降

2000年代以降、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ解析技術が進化し、これらを活用したスマートファクトリーが注目を集めるようになりました。スマートファクトリーでは、機械やセンサーがリアルタイムで情報をやりとりし、生産を最適化しています。これにより、工場全体がほぼ自動的に運営され、人間の手が必要な部分が大幅に減少しました。

また、自動運転技術や無人搬送車(AGV)の導入によって、工場だけでなく、物流業界でも省人化が進んでいます。これらの技術は、生産プロセスだけでなく、供給チェーン全体の自動化・省人化に貢献しています。

工場における省人化の必要性

1. 労働力不足への対応

少子高齢化や若者の製造業離れが進む中、多くの工場が慢性的な労働力不足に直面しています。特に、日本や欧米などの先進国では、若年層の人口減少が顕著であり、従来のように人海戦術に頼る生産方式が持続不可能になっています。省人化は、人員を削減しつつも生産能力を維持するための有効な手段です。

2. コスト削減

人件費は製造業における大きなコスト要因の一つです。省人化によって、工場での労働者数を減らすことで、給与や福利厚生にかかるコストを削減できます。また、従業員の休憩やシフト管理、労働時間の制限といった要因に左右されることなく、24時間稼働が可能な自動化システムを導入することで、さらなる費用対効果が図れます。

3. 生産性と効率の向上

自動化された機械やロボットは、精度が高く、反復作業でも一貫した品質を保つことが可能です。人間では発生しやすいミスや疲労によるパフォーマンス低下を避けることで、生産性の向上が期待されます。省人化によって、限られたリソースでより多くの製品を効率的に生産できるようになります。

4. 品質の均一化と改善

省人化を進めることで、機械やロボットが中心の生産ラインに移行でき、製品の品質を一定に保つことが可能です。人間が関わる作業では、技術や経験の差により品質にばらつきが出ることがありますが、自動化されたシステムではこうした問題が減少します。

5. 安全性の向上

製造業では、危険な作業や重労働が多くあります。省人化によって、ロボットが危険な作業や重い物の運搬を担うことで、労働者の安全性が向上します。労働災害を防止するためにも、省人化は重要な手段となります。

6. 労働条件の改善

省人化によって、重労働や単純作業から労働者を解放することができます。その結果、従業員はより付加価値の高い業務に専念できるようになり、モチベーションの向上や離職率の低下が期待されます。また、省人化が進むことで、働き方の柔軟性が向上し、労働環境が改善されることもあります。

7. 競争力の維持と向上

グローバル市場における競争が激化する中、省人化によるコスト削減や効率向上は、企業の競争力を維持・向上させるために欠かせません。特に、製造業がコスト競争に直面する場合、低賃金国との競争に打ち勝つためには、省人化による生産効率の向上が必要です。

8. 持続可能な生産の実現

環境負荷を低減し、持続可能な生産体制を整えるためにも、省人化が重要です。自動化技術を導入することで、エネルギー効率の向上や資源の無駄を削減し、環境への影響を最小限に抑えることが可能です。

省人化の実現方法

1. 現状の課題や業務分析

最初のステップは、工場や業務の現状を詳細に分析し、どの製造業務に人手が多くかかっているのか、どの作業が自動化可能かを把握することです。まず、作業員の「手順」を明確にし、工数を減らせるところがあれば、減らします。この段階では、現場の作業員や管理者の意見も取り入れながら、優先的に省人化を進めるべき領域を特定します。具体的には、以下の点を考慮します。

●人員が集中している作業や工程、ライン

●手作業が多く、反復性が高い業務

●ミスが発生しやすい作業や時間のかかる作業

2. 省人化の目標設定

次に、省人化の具体的な目標を設定します。たとえば、「特定の工程における人員を50%削減する」「一定の生産量を維持しつつ、人員を削減する」といった具体的な数値目標を立てます。これにより、省人化の進捗を測定しやすくなり、導入後の効果も把握しやすくなります。

3. 自動化技術やロボットの導入

省人化を進めるための中心的な手段が、自動化技術やロボットの導入です。技術導入は、次のような段階を経て進めます。

  • 単純作業の自動化:まずは、組立や搬送、検査などの反復作業をロボットや自動化装置に置き換えます。これにより、人間が行う必要のない作業が削減されます。

  • AIやIoT技術の活用:より複雑な作業や判断を要する業務には、AIを活用して自律的に作業を行うシステムを導入します。また、IoTを活用して機械や設備の稼働状況をリアルタイムでデータをモニタリングし、生産効率を最大化します。

4. 作業フローの見直し

自動化を進める際には、従来の作業フローも再検討する必要があります。自動化に適したフローに変更することで、全体の効率が向上します。

●人が行っていた複数の作業を統合し、自動化された工程に組み込む

●ボトルネックとなっている作業を分解・再配置することで、全体の効率を向上させる

5. 人員の再配置とスキル向上

省人化が進むことで、従来人手が必要だった業務が自動化され、労働者の役割が変わります。このとき、従業員がより付加価値の高い業務に従事できるように、適切な再配置と教育が重要です。再配置やスキル向上のための施策には以下のようなものがあります:

  • スキル再教育:自動化機器の操作やメンテナンスに必要なスキルを従業員に習得させる

  • 専門的業務への転換:データ分析や品質管理、設備のメンテナンスなど、専門的な業務への従事を促す

6. 省人化の効果検証と改善

省人化を進めた後、必ず効果を検証するプロセスを設けます。設定した目標が達成されているか、コスト削減や生産性向上が実現されているかを定量的に評価します。これらを基に、必要に応じて技術のアップデートや作業フローの再構築を行い、継続的な改善を進めます。

7. 長期的な省人化計画の策定

省人化は一度に完了するものではなく、継続的な取り組みが必要です。技術の進化や市場の変化に応じて、段階的に自動化を進めるための長期的な計画を策定します。たとえば、短期的には特定の工程の自動化を目指し、長期的には工場全体のスマートファクトリー化を目指すといった計画です。


まとめ

省人化を進めるためには、現状分析から始め、目標を設定し、それに基づいて適切な技術を導入する取り組みが重要です。特に、製造業においては、人員の再配置やスキル向上、作業フローの見直しを行うことが属人的な業務を削減し全体の効率化を図るためのポイントとなります。さらに、省人化の効果を最大限に活かすためには、運用中の効果を定期的に検証し、デメリットが発生しないように関連する改善策を継続的に実施することが大切です。これにより、お客様へのサービス品質を保ちながら、人材不足の問題を解決しつつ、持続的な効率化と生産性向上を実現できます。また、マニュアルを整備し、ツールの利用をサポートすることで、現場での運用を進めることができます。また、政府によって働き方改革がすすめられているため、自動化を進める上で、補助金などもうまく使いましょう。


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