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スマート農業の事例とメリット・実践を徹底解説!コラム


農業の現場で急速に進化している「スマート農業」とは、一体どのようなものなのでしょうか?労働力不足や高齢化が進む中で、日本だけでなく世界中で農業の持続可能性がその解決策として注目されていますが、IoT、AI、ロボティクスなどの情報を駆使した先端技術を活用し、生産性を向上させるスマート農業です。ドローンによる空中からの作物管理や自動運転トラクターなど、この記事では、スマート農業の定義や具体的な事例、そのメリットと課題について詳しく解説していきます。

スマート農業とは?

スマート農業の定義と概要

 スマート農業の定義と概要

スマート農業は、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボティクスなどの先端技術を活用し、農業の生産性や効率を大幅に向上させる農業手法のことです。カメラ、ドローンなどを使って畑や作物の状態をよく理解して、収集したデータをもとに最適な栽培方法を考えることができます。また、農業機械の自動運転トラクターや収穫ロボットなどの導入により、手作業が多かった農作業の負担を軽減し、省力化や効率化を実現しています。SDGsにも貢献する、持続可能な農業の実現が期待されています。

 スマート農業の成り立ちと歴史

スマート農業の考え方が広まったのは、主に2000年代に入ってからです。 農業人口の減少や高齢化が進む中で、従来のやり方では生産量を維持することが難しくなりました。そのため効率化や省力化、省人化が急務となりました。日本では特に、農業従事者の高齢化が深刻であり、次の担い手がいない状況です。そのため、農業の新たな技術を確保するための支援が急務とされています。

また、世界的にもスマート農業への注目が集まっており、アメリカやヨーロッパなどでは、ドローンやセンサー技術、衛星画像などを利用した精密農業が進化を遂げています。衛星データを使って仕事の成長状況を把握し、農薬や肥料の使用量を極力抑えつつ、収穫量を最大化する試みが行われています。持続可能な食料生産の基盤づくりにも取り組んでいます。

 農業経営における利益率

日本

日本の農業経営における平均的な利益率は、5%〜10%程度とされています。 ただし、米や野菜、果物、畜産などの目や、規模、直売や観光農園などの事業やビジネスモデルによって変動します。

大規模な農業経営や高度な技術を取り入れて効率化を進めることで、利益率を15%以上にすることも可能です。

世界

国際的な平均利益率は、日本よりもいくつか高い傾向があります。 例えば、アメリカの農業利益率は10%〜15%程度で、大規模農業や機械化・自動化の進んだ農場はさらに平均利益率が高いを維持していることが多いです。

オーガニック農業や高付加価値作物を育てる農場では、利益率が20%を超えることもありますが、投資や運営コストも高くなる傾向があります。


スマート農業における最新技術

 ドローンでの作物の生育監視

ドローンは、空中から高解像度の画像を取得することにより、多くの作品の状態をモニタリングできます。これにより、生育状況の把握が容易になり、病害虫の発生箇所や栄養不足の場所を特定するのドローンにはNDVI(正規化植生指数)センサーが搭載されており、作品の健康状態を数値化し、問題箇所を迅速に発見することができます。

具体的には、ドローンで撮影した画像データをソフト解析に取り込み、作物の成長速度、色の変化、病害虫の被害状況などを即座に確認することができます。葉の色を分析して、肥料を最適に供給するタイミングを判断することが可能です。 従来の人の目で行っていた観察よりも正確で、迅速な対応ができるため、作品の質と収量を向上させることが期待されています。

 農薬散布におけるドローンの効率性

農薬散布作業も、ドローンの活用で大幅に効率化されています。ドローンは、事前設定されたルートに従って正確に飛行し、特定のエリアにだけ農薬を散布することができます。農薬の使用を減らし、環境負荷を抑えながら仕事の健康を守ることができます。

従来の農薬散布では、トラクターや手動での散布が一般的で、時間や労力がかかるだけでなく、散布ムラが生じることもありました。一方、ドローンによる農薬散布は必要な量の農薬だけを正確に散布することが可能で、作業のスピードと効率が着実に向上しています。また、高い場所から農薬を散布することで、床に接触せずに済むため、作物へのダメージを軽減できます。

 自動運転トラクター

自動運転トラクターは、GPSとRTK技術を組み合わせて位置情報を精密に把握し、設定されたルートに沿って作業を行います。これにより、トラクターが直線的かつ一貫して作業し、均一で高品質な農作業が可能です。

トラクターには様々なセンサーが搭載されており、土壌の状態や作物の構成なども瞬時に検出することができます。 さらに、AIを活用した制御システムにより、障害物を自動で回避し、作物に応じた最適な耕起深度や速度での運転ができるため、作物の生育に理想的な土壌状態を維持しつつ、効率的な作業を実現しています。

 農作業の効率化事例

自動運転トラクターの導入によって、農作業の効率は飛躍的に向上しています。例えば、1人の農業従事者が多くの畑を管理する場合、通常のトラクターでは数日かかる作業も、自動運転トラクターならさらに、夜間や悪天候でも作業が可能であり、24時間体制で農作業を行うことができるため、作業のスピードが向上します。

ある農場では、自動運転トラクターを活用して畑の耕起作業を行うことで、年間の労働時間を20%以上削減できたという事例もあります。また、GPSによる正確なルートでの作業により、燃料これにより、農業従事者はより戦略的な作業に集中でき、全体の農作業の効率が大幅に改善されています。


スマート農業のメリット

 労働力不足の解消

スマート農業の最大のメリットのひとつは、労働力不足の解消に役立つ点です。 特に、農業労働者の高齢化が進む日本では、若手の農業労働者の負担を軽減し、農業の持続可能性を高めるために重要な手段となっております。

 高齢化社会における農作業支援

高齢化が進む農業分野では、体力的な負担が軽減されることが大きなメリットです。自動運転トラクターや収穫ロボットの導入により、重労働が大幅に軽減されるため、高齢者の農業労働者が自動運転トラクターを活用することで、直線的かつ均一に畑を耕すことが可能となり、手作業で行う負担を大幅に軽減できます。AIとロボットが高い精度で農作業を行うため、従来労働者が担っていた体力的負担が軽減されます。

 若手農業従事者への負担軽減

若手の農業従事者にとっても、スマート農業は大きなメリットをもたらします。 特に、スマートフォンやタブレットを使って農作業を管理できるために、デジタル世代の若者にとって使いやすい環境が整備されています。状況を瞬時に把握し、施肥や灌漑のタイミングを最適化するアプリケーションを使うことで、計画的な農作業が可能になります。また、ドローンによる監視や自動運転トラクターの操作を行うことで、重労働が大幅に減り、農業に携わる若者の定着率向上も期待されています。

 自動化技術による作業時間の短縮

自動運転トラクターやドローン、ロボットなどの自動化技術を導入することで、作業時間が大幅に短縮されます。従来、数人がかりで行っていた作業も、機械が正確かつ迅速に処理するため、畑の耕起作業では、自動運転トラクターが直線的に畑を管理し、人手による作業に比べて30%以上の時間短縮が可能です。散布は、トラクターに比べて時間がかからず、ムラのない散布ができるため、品質向上にも最適です。


スマート農業の取​​り組み

 導入機器のコストと資金調達の課題

スマート農業に必要な機器には、ドローン、センサー、AIシステム、自動運転トラクターなどがあります。これらの機器は高価であり、中小規模の農家にとっては導入が難しい場合もあります。農業用ドローンは数十万から百万円を超えるものもあり、自動運転トラクターに至っては数百万から数千万円に及ぶこともあります。そのため、資金調達が課題となります。

資金調達手段として、補助金などの活用が考えられます。政府や地方自治体から提供される農業技術導入支援の補助金がある場合、これを活用することで導入費用の一部を軽減することができます。ただし、補助金の申請手続きには時間と労力が必要であり、農業従事者が直接対応することが難しい場合もあります。

 メンテナンスや更新費用の発生

スマート農業機器の多くは、定期的な更新が必要です。例えば、ドローンのバッテリーやセンサーの交換、AIシステムのアップデートなどが挙げられます。これらのメンテナンス費用は、長期的には大きな出費となる可能性があり、スマート農業の導入後も一定の経済的な負担がかかることを覚悟する必要があります。

また、技術の進歩に伴って新しい機器が登場するため、最新の技術を維持するために、定期的に設備を更新する必要があります。これらの費用負担がスマート農業の長期的な導入を妨げる要因となっています。

 運用スキルと教育の負担

スマート農業機器を操作するためには、一定の技術スキルが求められます。例えば、ドローンの操縦や、AIを活用したデータ解析には専門知識が必要です。また、農業の経験が豊富でも、デジタル技術に不慣れな高齢者の労働者にとっては、これが導入の障壁となる場合があります。

そのため、スマート農業の導入には人材育成やトレーニングが必要であり、これには時間と費用がかかります。農業技術の研修プログラムや講習会を利用することで、基本的なスキルを身につけることができますできますが、それでも技術の進歩についていくには継続的な学習が必要です。

 トラブル発生時の対応力と課題

スマート農業機器は高度な技術を活用しているため、トラブルが発生した際には迅速な対応をする必要があります。例えば、センサーが故障したり、ドローンのシステムが不具合を起こした場合、迅速な対応ができないと農作業に影響が出てしまいます。

さらに、地域によっては技術サポートを提供する企業が少なく、遠隔地でのトラブル対応が困難な場合もあります。そのため、スマート農業を成功させるためには、機器を正しく管理・修理できる人材やサポート体制の確保も重要な課題となります。


スマート農業導入事例

 アシストスーツ(いちご農家)

特徴

・腰や腕などに作業負荷がかかる農作業や、重量物の持ち上げ(下げ)時にかかる負荷を軽減する。

・モーター搭載や空気を利用した人工筋肉など、アシスト機能の違いにより、軽減効果や導入経費が異なる。

導入効果

・年間の作業時間が 5.17%短縮された。

・特に、中腰姿勢で長時間作業を実施する 「定植」「マルチ張り」「収穫」作業にお いて、作業時間削減効果や作業負担軽減効果が高かった。

・腰の痛みが軽減され、 翌日に疲れが残らなくなった。 参考価格 15万円/台((株)イノフィス社製 マッスルスーツ Every 空気で動作、動力不用)


 ロボット草刈機(リンゴ農家)

特徴

・1台で最大 30a の面積を草刈りできる。 

・エリアワイヤーを設置したエリア内をランダムに走行しながら草刈りを行う。

・バッテリー残量が少なくなると自動で充電ステーションへ戻り充電する。

導入効果

・設置圃場における除草作業の大部分を無人化・ 省力化できた。 (1 年間の除草作業時間 20h/10a→1h/10a)。

・夏季高温下、傾斜地、樹冠下での人手による除 草作業が不要となり、従業員の労働環境の改善 につながった。


 直進アシスト機能付き田植え機(お米農家)

特徴

・GPS による位置情報を基にした直進時の自動操舵機能が付属している。

・経験の浅い作業者でもまっすぐきれいに田植えができるほか、熟練者の負担軽減 など、田植え作業の軽労化が期待される。


導入効果

・直進アシスト機能により、操作に慣れて いない初心者でもまっすぐ植えられる。 苗送りの在庫確認や移植の状況を余裕を もって確認でき、作業負担が軽減した。


 繁殖管理システム(畜産)

特徴

・ファームノート:個体毎の飼養記録や繁殖牛の分娩実績をPC やタブレットを用いて入力・ データを蓄積。発情、受精、妊娠鑑定、分娩のサイクルを的確に管理でき るソフト。

・ファームノートカラー:牛の首にセンサーを装着し、牛の行動パターン(反芻、休息、活 動)を自動計測。個体毎の活動パターンを AI が解析し発情兆候、 分娩兆候、疾病疑いをスマホ等のモバイル端末へ通知


導入効果

・牛舎外での作業中でもスマホに通知が来るので、常時、牛舎に張り付く必要がなくなり、安心してほ 場作業に取り組めるようになった。発情発見率が向上した。


まとめ

スマート農業は、ドローンによる作物の監視、自動運転トラクターによる省力化など、さまざまな技術が存在し、労働力不足の解消や生産性向上に大きく貢献しています。 高齢化が進む農業現場で、スマート農業は重労働を軽減し、若手農業労働者参入を促進する効果も期待されています。

初期コストや専門知識の必要性といった課題もありますが、農林水産省の補助金や教育機関のサポートを活用することで導入への準備をすることが可能です。 実際に成功事例として、アシストスーツやロボット草刈機、繁殖管理システムの導入により、省力化と労働環境の改善が実現しています。

スマート農業は、農業の未来を切り開く大きな可能性を秘めています。人口減少に伴い、スマート農業の導入が必須となってくるため、研究、開発が今後さらに進むでしょう。正しい技術導入とサポート体制が整えば、持続可能な農業の推進が可能となり、生産者と消費者の双方にとってメリットを生む持続可能な農業が普及し現実のものとなります。


参考文献

・茨城県(2022)「スマート農業について紹介します」

https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/hokunourin/kikaku/kikaku/smartnougyo2021.html(参照 2024-10-14)


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