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日本の食品業界の未来予測|少子高齢化とSDGsがもたらす変革とは?コラム
過去数十年間かけて、日本の食品業界の市場規模は比較的安定して過ごしています。その間、消費者の嗜好の変化、少子高齢化、そして国際的な競争が市場に影響を与えています同様に、高齢化の進展により、健康志向や高齢者向けの食品が市場の一部で急速に成長している、人口減少に伴う国内ニーズの縮小という課題にも取り組んでいます。
今回はそんな食品産業について解説していきます。
製造業における生産性向上の必要性
食品業界の市場規模の推移
日本の食品業界は、国内で非常に大きな市場規模を持っています。農林水産省によると、2021年における農業・食料関連産業の国内生産額は108,5兆円となっています。全経済活動の国内生産額の約11%を占める割合となっております。
国内の市場規模は、人口減少や高齢化に伴い、縮小しています。総世帯の食料支出総額の数位を品目別にみると、生鮮食品の支出額が支出総額を上回っていることから、加工食品の消費量は減少する見込みとなっています。急速な需要の減少が、日本の食品産業に大きな影響を与えることは不可避であることから、新たなビジネスの創出が重要です。
世界の農産物マーケットは、人口の増加に伴い、拡大する可能性があります。日本の食品産業の持続的な発展を図るためには、世界の食市場、特にアジアの食市場を獲得していく事が重要とされています。
そんな中海外市場への展開も進んでおり、アジアでの日本食品の人気を集めています。日本食の「ヘルシー」イメージが追い風となり、特に高付加価値の食品(有機食品や機能性食品)など)は成長市場とされています
マーケットをめぐる国際的な動き
SDGs(持続可能な開発目標)
食品業界をめぐる国際的な動きとして、SDGsが話題に取り上げられます。
SDGsは2015年9月に国連サミットにて「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標として採択されました。17のゴールを設定し、「飢餓」「水、衛生」「雇用」「生産・消費」「気候変動」「生物多様性」など環境保護などの生物圏に関するゴールだけでなく、経済、社会に関するゴールターゲットも包括しています。その中で食料や農業に関連する目標は中核となっています。
食品製造業の現状
経済産業省により実施された2020年度工業統計調査の産業別統計表によると、2019年時点での食品製造業の市場規模は約29兆8,572億円、企業数(従業員4名以上)は23,648社です。ここ5年の変化としては、市場規模は毎年1%の伸びを示していますが、対して企業数は毎年3%減少しています。
食品製造業は成長傾向
食品製造業は現在成長傾向にあり、特に健康食品への需要増加が顕著です。
高齢化に伴って健康に関心を持つ人が増加したことが理由として挙げられます。
これにより、食品製造業は新商品の開発に加え、販売中の商品のブラッシュアップなども積極的に行われています。
また、今後さらに需要の拡大が予測される新たな市場への開拓に取り組む企業が増えるでしょう。近年では、健康食品と同様に付加価値を持つ食品が好まれており、高品質・高い安全性にフォーカスした商品の需要増加が予測されています。
それに対し、同じ食品業界のなかでも外食産業の成長に関しては少しペースダウンしました。
飲食業の「きつい」というイメージは景気回復後も続き、人手不足とその影響によるサービスの品質が低下したことが要因として考えられます。
海外展開
海外での日本食ブームに伴い、海外への市場展開に注力する日本の企業が増えてきています。
また、外食産業だけでなく食品製造業も国外での利益を求めており、今後も大手企業を中心として海外に拠点を広げるでしょう。
2020年に開催された東京オリンピックの影響は大きく、諸外国から注目されているため、海外での消費はこれからさらに拡大すると予想されています。
特に経済発展がめざましく日本の食品の安全性への信頼度が高いアジア地域に重点をおく企業が多い傾向にあります。
今世紀にはいってから、アジア市場を中心に本格化し、現地法人数は2021年で、約1,300社です。しかし、国内法人数に対する現地法人数の比率を見ると、食品製造業の割合は、その他、製造業と比較して、約1/3と低い状態です。
ですが、加工食品の輸出が拡大しています。農林水産物・食品の輸出額は14,140億円。そのうち加工食品は、5,051億円です。
フードテックを活用した新たなビジネスの創出
世界的な人口増加等による食料需要の増大や、SDGsの関心の高まりを背景に、食品産業においても、環境負荷の低減など、様々な社会課題の解決の加速が求められています。また、健康志向や環境志向など、消費者の価値観も多用しており、こうした多様な食の需要に対応し、社会課題の解決を加速するための、フードテックを活用したビジネスの創出への関心が高まっており、フードテック分野への投資も増加しています。
今後伸びると予想されるメーカー
健康志向の食品メーカー
消費者の健康志向が強い中、健康食品や機能性食品を提供されるメーカーの成長が期待されています。 具体的には、カロリーを抑えた商品や栄養価の高いスーパーフード、さらには特定の健康問題に対応した食品(例: 糖尿病対応の低GI食品)が注目されています。ただし製品は、特に高齢化社会を迎えた日本において、さらに重要な位置を占めることが予想されます。
プラントベース食品メーカー
環境意識の現状に沿って、植物由来の食品(プラントベースフード)が注目を集めています。プラントベースの肉や乳製品の代替品は、健康や環境保護に配慮した商品として市場を拡大しています。例、ビーガンやベジタリアン向けの商品だけでなく、一般消費者にも受け入れられるような味や栄養バランスを備えた製品が増えています。さらなる成長が期待されます
サステナブルな食品メーカー
環境保護やサステナビリティに対する意識が高まる中、食品業界でもサステナブルな解決を行うメーカーの成長が見込まれています。環境に優しいパッケージや食品廃棄物の削減、さらには地産地消の推進など、エコロジカルな取り組みを積極的に進める企業は、消費者が理解しやすくなります。 この傾向は、日本だけでなく国際市場においても強く、持続可能なビジネスモデルを持つ企業はグローバルな競争力を持つことがございます。
食品製造業界におけるM&Aの動向
少子高齢化による市場の縮小は、食品業界内での競争を激化させています。
他社との差別化を図るために価格を下げた結果、他社の追随による厳しい価格競争は避けられません。
価格面以外の差別化としては、品質の向上・頻繁な新商品の開発が挙げられます。食品に対して消費者が求める高品質化は年が経つごとに高まりを見せており、そのニーズを満たすための施策として、M&Aを活用するケースが増えています。海外展開に向けたクロスボーダーM&Aや規模拡大を目指した同業者とのM&A、健康志向への需要をねらった異業種とのM&Aなどが挙げられるでしょう。
国内の食品市場縮小の予測に伴い、飽和気味の日本市場から海外市場への参入を目的とした海外企業とのM&Aが積極的に行われています。国際間での取引となるクロスボーダーM&Aは、対象国での事業拡大をベースとして、販路の獲得や生産拠点の確保、自社製品の提供などが目的です。
さらには、企業規模を大きくすることを目的とした同業者同士のM&Aにより、スケールメリットを得る企業が増えています。
特に商品の差別化が難しい製粉・製油・製糖などの素材型の食品製造業者が多い傾向にあります。加工メーカーに原料として供給する場合には、規模の大きさを生かして効率化が図れることがメリットとなるでしょう。
食品業界のトレンド
テクノロジーの食品導入
業界では、IoTやAIなどのデジタル技術の導入が進んでいます。生産ラインの効率化や、食品の鮮度を考慮するための物流管理など、テクノロジーの活用が進むことで、コスト削減特に、AIを活用した予測や、生産ラインの自動化は、今後の競争力を高める上で重要な要素となるでしょう。
EC市場の拡大
コロナ禍により、オンラインショッピングの需要が急増しました。これに伴い、食品業界もEC市場の拡大が続いています。食品の定期購入サービスや、冷凍食品のオンライン販売、さらには農産物の特に、食品の安全性や品質に対する信頼性が求められる中で、透明性の高い供給チェーンを構築することが企業にとって重要です。
フードデリバリーサービスの進化フードデリバリー
市場も急成長しています。スマートフォンアプリを活用したデリバリーサービスは、都市部を中心に拡大しており、今後も成長が期待されます。特に「デリバリー専用の食品」を開発を進める加速しており、デリバリーに特化したビジネスモデルも登場しています。 デリバリー市場は、消費者のライフスタイルの変化により今後も成長が続いて見られています。
今後の展望と将来性
人口減少と高齢化への対応
日本国内では少子高齢化が進行しており、これが食品業界に大きな影響を与えています。人口が減少することで、国内市場の規模が縮小することは避けられますんが、そのため高齢者向けの食品市場が急成長しています。 高齢者に特化した栄養補助食品や、遊びやすく飲み込みやすい食材など、シニア市場に対応した製品開発が進められています。
海外市場への普及
国内市場の成長が限界化される中で、日本の食品メーカーは海外市場への展開を強化しています。 特に、アジア諸国や西部市場においては、日本食が「健康的で安全な食品」 」として高い評価をいただいており、これが成長の大きなチャンスとなっております。
サステナビリティと環境の課題
消費者の間で環境への意識が高まる中、食品業界もサステナブルな取り組みを進めています。環境負荷を軽減するパッケージの開発や、フードロス削減に向けた取り組みは今後も行われます食品廃棄のリサイクルや、再利用可能な資材を使った商品が、消費者を応援しており、企業のブランド価値向上にもつながります
まとめ
この記事では、日本の食品業界が長年にわたって安定した市場規模を保ちながらも、少子高齢化や国際競争、消費者の健康志向の高まりに直面していることが強調されています。特に、健康食品やプラントベース食品、サステナブルな製品に対する需要が増加しています。加えて、AIやIoTを活用したテクノロジーの導入や、フードテック分野の成長も進行中です。今後は、国内市場の縮小に対応しつつ、海外市場への展開や持続可能な取り組みが重要となります。
さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す動きが強調されており、特に食品業界は環境負荷軽減や食品ロス削減を進めています。また、フードデリバリー市場の拡大や、M&Aを通じた企業の規模拡大など、競争力を高めるための様々な取り組みが行われています。
参考文献
・農林水産省(2019)「食品産業をめぐる情勢」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/jizoku/attach/pdf/index-13.pdf(参照 2024-10-25)
・M&A BEST PERTNERS「食品製造業の市場規模とは?業界におけるM&Aの動向についても解説」
https://mabp.co.jp/magazine/7728/ (参照 2024-10-25)
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