news

野菜の1日平均摂取量と価格高騰の現状｜食品工場の自動化でできることコラム

更新日:2025.02.25 公開日:2022.08.31

日本の食卓に欠かせない野菜ですが、近年、1日あたりの平均摂取量が減少傾向にあります。また、天候や物流の影響により野菜の価格が高騰し、消費者の購入意欲が低下しているのも事実です。本記事では、野菜の1日平均摂取量や価格上昇の原因を解説するとともに、食品工場における自動化の活用事例を紹介し、業界全体の課題解決に向けた新たな取り組みについて考えていきます。

日本人はどのくらい野菜を食べているのか？

　厚生労働省が推奨する野菜の摂取量は1日あたり350gですが、実際の摂取量はそれを下回る傾向にあります。2022年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の平均野菜摂取量は280g前後にとどまっており、目標値には約70g不足しています。特に若年層や単身世帯では野菜摂取が少なく、これらの層に向けた新たな食品加工技術や市場対策が求められています。

なぜ日本人の野菜摂取量が少ないのか？

食の欧米化

　近年、日本の食文化は欧米型へとシフトし、野菜摂取量の減少につながっています。朝食のパンやシリアルの普及により、ご飯と味噌汁の習慣が減少し、野菜を意識的に摂取しなければ不足しがちです。また、ファストフードやコンビニ食品の利用が増加し、ハンバーガーやフライドポテトなど炭水化物や脂質中心の食事が一般的になっています。さらに、調理に手間のかかる和食の摂取頻度が減り、野菜を多く含む煮物やお浸し、味噌汁が食卓に並ぶ機会が減少しています。

共働き世帯の増加

　共働き世帯の増加により、時短調理が求められる中、野菜の調理は手間がかかるため敬遠されがちです。特に葉物野菜や根菜類は下準備が必要なため、手軽な加工食品や惣菜に頼ることが増え、結果として野菜摂取量が減少しています。仕事で帰宅が遅い場合は、すぐに食べられる惣菜や冷凍食品が選ばれますが、野菜が不足しやすい傾向にあります。また、親の手作り食が減ることで、子どもが野菜を食べる機会も減少し、成長期の栄養バランスに影響を及ぼす可能性があります。

価格の変動

　野菜は天候や災害の影響を受けやすく、価格の変動が大きい食品の一つです。台風や長雨、猛暑による収穫量の減少で市場価格が上昇し、特に葉物野菜は価格変動が激しいため家計に影響を与えます。価格が高騰すると家庭では野菜の購入を控えがちになり、一時的に摂取量が減少します。その代替として、安定した価格で購入できる加工食品や冷凍食品が選ばれることが増えますが、野菜の含有量が少ないものも多く、結果的に摂取量不足につながります。

外食や中食の影響

　外食や中食の利用が増加し、野菜摂取量の減少が進んでいます。飲食店のメニューでは炭水化物や肉が中心となり、ラーメンやカレー、パスタなどでは野菜の量が不足しがちです。また、コンビニやスーパーの弁当・惣菜も手軽で便利な反面、肉や揚げ物が多く、野菜が不足する傾向にあります。特に若年層や単身世帯では、自炊の手間を避けるため外食やコンビニ食に頼る機会が多く、慢性的な野菜不足に陥りやすい状況となっています。

野菜不足を解消するための対策

　野菜不足を解消するためには、日常生活での工夫が重要です。調理の手間を減らすために冷凍野菜やカット野菜を活用すると、時短調理が可能になり、価格も比較的安定しています。野菜を主役にしたスープや鍋、炒め物などを取り入れることで、無理なく摂取量を増やせます。外食時には、サイドメニューでサラダや野菜スープを選ぶなど、積極的に野菜を摂る意識が必要です。また、最近では野菜を多く使用した冷凍食品や惣菜も増えており、こうした商品をうまく活用することも有効な手段となります。

野菜の価格が高騰している理由

　近年、野菜の価格が上昇している背景には、いくつかの要因が影響しています。

(1) 天候不順による生産量の減少

　異常気象や台風、大雨、猛暑などが農作物の生育に影響を及ぼし、収穫量が減少すると市場価格が高騰します。特に、葉物野菜（レタス、キャベツ、小松菜など）は天候の影響を受けやすく、価格変動が激しいです。

(2) 燃料・輸送コストの上昇

　ガソリン価格の高騰や人手不足による物流コストの上昇が、野菜の価格にも影響を与えています。特に地方から都市部への輸送が必要な野菜は、その影響を強く受けやすいです。

(3) 生産者の減少と高齢化

　農業従事者の減少により、国内の野菜生産量が減少しているのも価格高騰の一因です。新規就農者が増えにくい状況が続いており、農業の担い手不足が深刻化しています。

(4) 海外依存のリスク

　日本の野菜は一部を輸入に頼っており、円安や国際的な供給不足が価格上昇を引き起こすこともあります。例えば、中国からの輸入野菜は円安の影響を受け、価格が上昇することがあります。

野菜の価格高騰に対応する食品業界の動き

　野菜の価格が高騰する中、食品業界ではさまざまな対策が取られています。

加工野菜の活用

　飲食店や食品工場では、カット野菜や冷凍野菜を活用することでコストを抑えています。特に冷凍野菜は価格が比較的安定しており、需要が増加しています。

代替食材の活用

　高騰した野菜の代わりに、他の食材を使うことでコストを調整する動きも見られます。例えば、キャベツの代わりにもやしを使用するなどの工夫がなされています。

生産効率の向上

　農業のスマート化（スマート農業）や、食品工場での自動化による生産効率向上が進められています。

野菜加工工場の自動化でできること

　食品業界では、自動化技術を導入することで、野菜の価格高騰や人手不足の問題を解決する動きが進んでいます。FOOD TOWNでは、食品工場向けの最新の自動化ソリューションを紹介し、業界の課題解決に貢献しています。

カット野菜の自動加工

　食品工場では、野菜のカット作業を自動化することで、大幅な作業時間の短縮と人件費の削減が可能になります。従来、手作業で行っていたキャベツの千切りやニンジンのスライス、玉ねぎの角切りなどを、高速かつ均一なサイズでカットできる機械が導入されています。これにより、加工のスピードと精度が向上し、食材ロスの削減や衛生管理の強化にもつながります。さらに、最新の自動カット機では、カットする野菜の硬さや水分量に応じた最適な刃の調整が可能なものもあり、品質を維持しながら効率的に加工が行えます。

自動洗浄・殺菌システム

　野菜の洗浄・殺菌は食品の安全性を確保する上で重要な工程です。近年、食品工場では高度な自動洗浄・殺菌システムが導入されており、流水洗浄、超音波洗浄、高圧水流洗浄、オゾン水殺菌、UV殺菌など、さまざまな技術を組み合わせた機器が使用されています。これにより、農薬や土の残留物、微生物などの除去を徹底し、衛生基準を高いレベルで維持することができます。また、最新のシステムでは、洗浄後の野菜の鮮度保持や、水の再利用を行うことで、環境負荷の低減にも貢献しています。

AIを活用した検品・選別

　AI技術を活用することで、これまで人の目で行っていた検品や選別作業を自動化し、効率化を図ることができます。高性能なカメラとAIによる画像解析を用いたシステムでは、野菜の傷や変色、異物混入を瞬時に検出し、不良品を選別することが可能です。例えば、トマトやレタスの表面の傷を高解像度カメラでスキャンし、正常品と異常品を自動で分類する機械が導入されています。また、AIが過去のデータを学習し、品質判定の精度を向上させるため、従来よりも安定した品質管理が実現できます。これにより、食品ロスの削減や、消費者により安全な商品を提供することが可能になります。

自動包装・梱包

　包装・梱包の自動化により、人手不足の解消や生産性向上が進んでいます。最新の機械では、異物混入防止や密封技術の向上により、安全性が強化されており、真空包装やガス充填包装を活用して鮮度保持も可能になっています。さらに、AIによる検品システムと連携することで、不良品の排除や包装ミスの防止が実現。環境配慮型の包装技術も発展し、リサイクル可能な包装材の採用も進んでいます。自動化により、高品質な食品の安定供給とコスト削減が可能になっています。

スマート農業との連携

　食品工場の自動化だけでなく、野菜の生産段階においてもIoTやAI技術を活用する「スマート農業」の導入が進んでいます。例えば、農場のセンサーを活用して、天候、土壌の水分量、肥料の状態などをリアルタイムで監視するシステムが開発されており、これにより農作物の生育状況を最適に管理することが可能になります。また、ドローンやロボットを活用した自動収穫機が導入され、野菜の収穫作業の省力化が進められています。さらに、スマート農業と食品工場のデータを連携することで、生産計画と加工工程を最適化し、安定した野菜供給が可能となります。こうした技術革新により、効率的な生産と供給が実現され、日本の食料自給率向上や持続可能な農業の実現にも貢献しています。