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食品価格高騰の裏側|2025年、食品工場が取るべき3つの現場対策とは?コラム


 2025年、食品価格の値上げが深刻さを増し、ニュースでも頻繁に取り上げられるようになっています。食品業界でも値上げの波が一段と強まり、製造現場ではその影響がより深刻化しています。原材料費や人件費、物流コストの上昇は企業努力だけでは吸収しきれず、多くの食品メーカーが価格改定を余儀なくされています。

 この記事では、最新の統計データとともに、食品工場が現場で取り組むべき具体的な対策を3つの視点から解説します。

2025年の食品業界における値上げの現状

値上げ品目数の急増

 帝国データバンクの調査によると、2025年1月から5月末までに値上げされた食品の品目数は14,409品目にのぼり、前年の通年値上げ件数(14,197品目)をすでに上回りました。特に4月は年度替わりや物流業界の規制強化も重なり、1カ月で4,000品目以上が値上げされる結果となっており、企業側の価格改定への対応が急務となっています。

 値上げが目立つのは、調味料類(マヨネーズ、ケチャップなど)や加工食品(冷凍食品、レトルトカレー)、菓子類、パン類といった家庭で頻繁に使用される食品に加え、缶ビールやチューハイ、コーヒー飲料などの酒類・清涼飲料も例外ではありません。特に2025年4月には、酒類・飲料だけで1,222品目が値上げされており、前年を上回るペースで推移しています。

平均値上げ率と複合的な背景要因

 平均値上げ率は16%で、前年(17%)よりわずかに低下しているものの、依然として高水準です。背景には、原材料費やエネルギーコストの高騰、最低賃金の上昇、円安の継続といった要因が複雑に絡み合っています。
 特に、原材料の国際価格高騰と円安のダブルパンチが食品メーカーに大きな圧力をかけており、加えて物流費や人件費の上昇も価格改定を後押ししています。

 値上げが加速する中で、特に中小規模の食品工場では価格転嫁が難しく、利益圧迫が深刻化しています。

出典:帝国データバンク「2025年 食品主要195社 価格改定動向調査(5月)

値上げの主な要因

 価格上昇の背景には複数の要素が複雑に絡んでいます。ここでは、特に影響が大きい3つの要因「原材料費」「物流費」「人件費」に焦点を当て、それぞれの要因に対して、食品工場が知っておくべき具体的な事情を絡めながらご紹介します。

原材料価格の高騰

 小麦、油脂、砂糖、乳製品、大豆など、主要な原材料の国際価格は高止まり傾向が続いています。特に日本は輸入依存度が高いため、円安の影響を受けやすく、仕入れコストの増加が避けられません。

国際相場と為替の影響

 国際的に見ると、穀物や油脂類の価格は気候変動や地政学的リスクにより不安定な状況が続いています。円安が進行する中、海外からの輸入品に依存する日本では、仕入れコストがさらに跳ね上がる傾向にあります。

物流費の上昇

 2024年4月に開始された「物流2024年問題」により、トラックドライバーの時間外労働規制が強化されました。その結果、輸送能力が減少し、物流費が上昇。これが製品価格に直接影響を与えています。

働き方改革関連法の影響

 ドライバーの労働時間短縮により輸送能力が制限され、物流各社は料金の引き上げを余儀なくされています。特に長距離輸送におけるコスト増は、中小の食品工場にとって直接的な打撃です。

最低賃金の上昇

 政府は最低賃金の全国平均を2025年度中に1,000円以上とする目標を掲げており、多くの地域で実際に時給1,000円を突破しています。これにより、食品工場における人件費負担が増加し、生産コスト全体を押し上げています。

食品工場が取るべき3つの対策

 食品業界におけるコスト上昇が止まらないなか、食品工場が競争力を維持するためには、現場単位での実践的な対策が不可欠です。ここでは、設備・労務・資金調達という3つの視点から、現場で実行可能な具体策を紹介します。いずれも即効性と持続性を兼ね備えた内容ですので、自社にとって何が最適かを見極める参考にしてください。

潤滑剤・グリースの見直しによるコスト削減

 機械の稼働を支える潤滑剤やグリースは、直接的な材料費ではないものの、運用コストに大きな影響を与えます。

グレードの最適化でコスト削減

 オーバースペックな潤滑剤を使用していた場合、適切なグレードのものに見直すことでコストを削減できる可能性があります。また、潤滑不良による機械トラブルやライン停止を防ぐことで、間接的な損失も抑制できます。


★潤滑剤のコストダウンについてはこちら
食品工場のコスト削減術|潤滑剤見直しで大幅コストダウンも可能?チェックリスト付き

自動化による人件費・労働負担の軽減

 慢性的な人手不足と人件費の上昇は、食品工場にとって深刻な課題です。

自動化による省人化のメリット

 特に単純作業や重労働を伴う工程では、自動化設備の導入によって作業負荷を軽減し、省人化を実現できます。

最新技術の活用と導入効果

 近年では、AIによる画像認識やロボティクス技術の進化により、小規模工場でも導入可能な設備が増えてきました。生産性の向上だけでなく、従業員の定着率向上や品質の安定化にもつながるため、長期的な投資効果が見込まれます。

補助金制度の積極的な活用

 国や自治体が提供する補助金制度を活用することで、コスト負担を抑えつつ設備投資を進めることが可能です。

補助金申請のポイント

 補助金申請には申請書類や導入計画書の作成など一定の手間がかかりますが、外部の支援機関を活用することで負担を軽減できます。補助金の申請スケジュールや対象設備の要件は定期的に更新されるため、最新情報のチェックが重要です。

不確実な時代を乗り切る食品工場の経営戦略

 価格高騰や人手不足、環境変化といった多面的なリスクに対応するためには、単なる現場対応にとどまらず、経営全体の視点からの変革が求められます。最後に、食品工場が中長期的に持続可能な経営を実現するために必要な考え方や体制整備のポイントを紹介します。

守りの経営から攻めの経営へ

 価格転嫁が難しい環境下において、従来の「守りの経営」では立ち行かなくなっています。今後、食品工場に求められるのは、変化を前提とした「攻めの体質」への転換です。

コスト構造の“見える化”を習慣に

 まず重要なのは、現場のコスト構造を定期的に“見える化”する習慣です。固定費や変動費の内訳を細かく把握し、小さな無駄を積極的に洗い出すことが、次の一手を打つ土台になります。

組織の学習力を高める

 従業員を巻き込んだ改善提案制度や、生産性向上をテーマとしたワークショップの実施など、「組織としての学習力」を高めることも有効です。

まとめ

 2025年の食品業界は、値上げ圧力とコスト上昇という二重苦に直面しています。こうした中で、食品工場が生き残るためには、目に見えにくいコストの見直しと、省人化・効率化への投資、そして補助金活用による資金調達という3つの柱をバランスよく取り入れることが鍵となります。

 経営体質の転換と現場の意識改革が並行して進むことで、厳しい経済状況の中でも着実な成長が可能になります。変化を恐れず、前向きに取り組むことが、今後の競争力を左右します。

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