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PCQIとは?コラム
PCQI(Preventive Controls Qualified Individual)とは、米国食品安全現代化法(FSMA: Food Safety Modernization Act)に基づき、米国へ食品を輸出する企業が食品安全計画を策定、実施、監視する際に必要となる重要な資格です。FSMAの中核である「予防的管理策」においては、リスクに基づくアプローチを採用し、食の安全を保証するための積極的な管理が求められています。PCQI資格を有する人材が企業内で責任を果たすことで、食品の安全性が確保され、米国市場における信頼が構築されます。今回はPCQIについて詳しく解説していきます。
PCQIとは?
PCQIとは、日本語では「予防的管理策有資格者」とも訳され、食品製造業者が製品の安全性を確保するための予防的管理プランの策定と監視を担当する人物を指します。米国食品医薬品局(FDA)は、この資格を持つ人を食品安全計画の実行責任者と定めています。PCQI資格を得るには、FSMAが定める特定のトレーニングコースを修了するか、もしくは十分な知識と経験を持つことが求められます。
PCQIが必要とされる背景 – FSMAの役割と重要性
米国における食品安全は、消費者の健康保護だけでなく、製造業者や輸出業者の信頼確保のためにも非常に重要です。2011年に制定されたFSMAは、食品関連業界に対する予防的な安全管理の基盤を築き、従来の「対処的管理」から「予防的管理」へと大きく転換しました。
FSMAの導入により、PCQIは次のような重要な役割を担うようになりました。
リスク分析と管理プランの策定
危害分析(HACCP)を基本とし、物理的、化学的、微生物的危害の識別と予防が求められます。
物理的危害: 異物の混入が考えられます。たとえば、製造過程でのガラス片や金属片、プラスチックの破片などが該当します。これらの物質が食品に混入しないように、工場内の装置や製造手順における定期的な点検や管理が必要です。
化学的危害: 化学物質の残留やアレルゲンの交差汚染が挙げられます。例えば、洗浄剤や消毒剤の残留物、あるいは製品にアレルゲン成分が意図せず混入するリスクも含まれます。化学的危害の管理は、作業工程や器具の消毒プロセスを徹底し、使用する化学物質の種類や量を管理することでリスクを最小化できます。
微生物的危害: サルモネラ菌や大腸菌、リステリア菌などの微生物の繁殖が含まれます。温度や湿度が管理されていない場合、これらの微生物が増殖し、食品の安全性にリスクが生じます。このため、加熱・冷却の工程の徹底や定期的な清掃、消毒が不可欠です。
予防的管理の策定と実施
特に米国への食品輸出を視野に入れる日本企業において、PCQI資格保持者の確保は避けて通れません。特定の製造工程における危害を予防するため、工程ごとに管理基準を定め、従業員が手順通りに作業するプロセス管理や、清掃・消毒の頻度と方法を明確に定めるサニタリー管理によって作業環境の衛生を保つこと、さらにアレルゲンを含む製品の製造ラインの区分けや専用器具の使用、表示の徹底といったアレルゲン管理を通じ、病原菌の残存や微生物による汚染、アレルギー物質の交差汚染といったリスクを総合的に防ぐことが重要です。
記録の維持と管理
食品安全計画の実行において記録を維持することを厳格に求めています。PCQIは、この記録の管理と保管も重要な役割の一部として担います。記録の適切な維持と保管は、監査時に備え、製造業者が実際に予防的管理策を適切に実行している証拠を示すための重要な手段となります。
PCQIの役割と責任
PCQIには主に次の3つの役割が求められます。
食品安全計画の策定:まず、食品製造過程での危害分析を実施し、予防的管理策を作成します。具体的には、製造過程における微生物汚染リスクや異物混入、アレルゲン管理の観点から、問題が生じないような安全基準の策定が求められます。
予防的管理の監視と実施:策定した計画が実際の現場で適切に実行されているかを監視する責任があります。例えば、温度管理や衛生管理において、日常的なモニタリングが必要です。
計画の見直しと改善:製造プロセスや原材料の変更が生じた際、またはFDAからの指摘を受けた際に、食品安全計画を見直し、改善する必要があります。
PCQIが担当する具体的な食品安全計画の構成要素
食品安全計画は、以下の主要な要素で構成されます。
危害分析(Hazard Analysis):物理的、化学的、微生物的危害の特定と評価。
予防的管理策の策定(Preventive Controls):危害に対して予防的管理策を講じ、製品の安全性を保証する。
モニタリング手順の確立(Monitoring Procedures):管理策が適切に機能しているかを日常的に確認する手順の設計。
是正措置の手順(Corrective Actions):不適切な事態が発生した場合に速やかに対応するための手順を構築。
検証活動(Verification Activities):予防的管理策が機能しているかを検証し、記録を通して証明する。
PCQI資格を取得するには? – トレーニングと要件
PCQI資格は、FDAが認定するトレーニングプログラム(通常はFSPCAが提供するコース)を受講することで取得可能です。このトレーニングでは、危害分析の方法や予防的管理策の実施方法について学びます。また、資格取得には専門知識のほか、一定の実務経験も重要とされています。
具体的なPCQIのトレーニング内容は以下の通りです。
危害分析とリスク評価の理解:危害の特定からリスク分析手法について学びます。
予防的管理策の設計と監視:アレルゲン管理や異物混入対策など、管理策を具体的に設計する技術を身に付けます。
是正措置と検証:計画通りに実施されているかを確認し、必要に応じて改善を図ります。
PCQIが求められる企業にとってのメリットと課題
PCQI資格保持者を有することで、企業にはいくつかの重要なメリットがあります。
米国市場へのアクセス:FSMAに適合する食品安全計画を作成でき、米国への輸出が円滑になります。
信頼性の向上:PCQI資格は、企業の食品安全に対する真摯な取り組みを示し、消費者や取引先からの信頼を得られます。
リスク管理の効率化:予防的管理に基づいた計画により、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。
一方、PCQIを有することによる課題もあります。特に中小企業の場合、PCQIを取得するためのトレーニングコストや人材の確保が負担になることが考えられます。さらに、計画を策定した後も定期的な見直しやFDAへの提出書類の準備が必要であり、リソースの投入が不可欠です。
PCQI取得が進む中での今後の展望
PCQIの役割は、今後もさらに重要性を増していくと予測されます。食品の安全に対する意識が高まる中、米国だけでなく他国でも同様の安全基準が求められる可能性が高いため、PCQIの知識は国際的な競争力を持つための一助となるでしょう。また、PCQI資格を持つ人材の活用は、食品業界の信頼性向上にも寄与すると考えられます。
企業にとっては、食品安全計画の導入と実施にPCQIを取り入れることが今後の成長戦略における重要なステップとなるでしょう。
まとめ
PCQI(予防的管理策有資格者)は、米国食品安全現代化法(FSMA)の下で食品製造業者が食品安全計画を策定・実施・監視するために必要な資格であり、食品の安全性を確保するための中心的な役割を担います。PCQIは、危害分析(HACCP)を基に物理的、化学的、微生物的危害の特定と予防、予防的管理策の策定と実施、そして記録の維持と管理を行います。これにより、米国市場への輸出を円滑にし、企業の信頼性を高め、食品安全リスクを効率的に管理することが可能になります。
一方で、PCQI資格取得にはトレーニングコストや専門人材の確保といった課題もあり、特に中小企業には負担となる可能性があります。しかし、食品安全への国際的な関心が高まる中で、PCQI資格は競争力を向上させる重要な要素であり、今後ますます需要が高まると考えられます。食品業界における信頼性を強化し、グローバル市場で成功を収めるために、PCQIの役割は欠かせないものとなっています。
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