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メタン発酵排水処理システム

メタン発酵排水処理システム
1.好気性処理と嫌気性処理(メタン発酵)

 一般的な排水の生物処理法(活性汚泥法など)ではブロワーにより供給される酸素を利用して、微生物が水中の有機物を水と二酸化炭素に酸化分解することで処理が行われます(好気性処理)。これに対し嫌気性処理(メタン発酵)では、酸素遮断下において嫌気性(酸素を好まない)微生物の働きにより、有機物を主にメタンガスに変換する処理法です。

2.創エネルギー(エネルギーの創出)
 発生するメタンガスは都市ガスの主成分であるため、ボイラーや発電機の燃料として利用することができ、その分の化石燃料の使用を抑制することが可能です。

3.省エネルギー
 嫌気性処理(メタン発酵)では酸素供給の必要がないためブロワーを使用する必要がありません。ブロワーの消費電力は非常に大きく、排水処理設備における消費電力の50~80%を占めることもあります。これが不要になるので最大80%近い省エネルギーを達成することが可能です。

4.汚泥発生量の削減 
 好気性処理(活性汚泥法)での汚泥発生量は流入BODに対し35~40%程度、当社好気性処理装置「回転児雷也」では10~20%程度であるのに対し、メタン発酵での汚泥発生量は約5%と非常に低い値となっています。
 これはメタン発酵の際に微生物が得られるエネルギーが好気性と比較して非常に小さいことに由来しています。メタン発酵菌の増殖速度は極めて遅く、余剰汚泥の発生は少なくなります。

5.再生可能エネルギーの売電(FIT)
 食品などの排水の場合、メタン発酵から得られるバイオガスは食品原料(動植物などの天然物)に由来しています。そのためこのバイオガスを燃料にして得られた電力は再生可能エネルギーとして固定価格買取制度(FIT)の対象となります。メタン発酵バイオガス発電による電力の買取価格は、2022年現在39円/kWhと太陽光などと比較してかなり高く設定されているため大きな売電収入を得ることができます。一方でCO2削減枠も同時に販売することになるため、自社の脱炭素実績としてカウントすることはできなくなります。
 ※買取価格は今後改訂される可能性があります。詳細は経済産業省HPをご参照いただくか、当社までお問い合わせください。

6.メタン発酵の利点(その他)
(1) 難分解性物質の処理
 嫌気性微生物は好気性の微生物と異なる代謝経路を持っています。このため好気性で処理困難な排水でも、嫌気性で処理できる可能性があります。特に芳香族物質の分解についてはその分解経路が解明されています。
(2)季節操業排水の処理
 嫌気性微生物は栄養源が得られず、飢餓状態に陥った場合でも長期間生存することが可能です。このため農産物加工など特定の季節にしか排水の発生しない場合でも、処理が可能です。

7.メタン発酵の適用範囲
 メタン発酵排水処理のメリットが非常に大きいものの、現状の有機性排水処理はその殆どが好気性処理によるものとなっています。これには様々な要因があるものの、メタン発酵排水処理の適用範囲が限定されていることが最大の理由となっています。これまでメタン発酵排水処理が適用されてきたのはアルコール・糖類など一部の業種に集中しており、油分やタンパク質、澱粉などを含む一般的な食品排水などには適用は困難であるとされてきました。当社はメタン発酵排水処理の適用範囲を大きく広げる新しい技術「とくとくーぶぶぶ」の開発に成功し、2022年現在多数の実装置が稼働しております。本技術により多くの食品排水などでメタン発酵排水処理の適用が可能になり、多くのメリットと脱炭素の実現を達成しております。

回転児雷也

回転児電也
「回転児雷也」は固定床式(接触ばっ気式)排水処理装置です。槽内に微生物を保持する担体を充填し、担体表面上の微生物の働きにより水質を浄化します。活性汚泥法のように汚泥濃度を管理する必要がなく、返送汚泥もありません。溶存酸素濃度も厳密な管理は必要なく、専門的な知識がなくても安定した運転が可能です。
表面積の大きな高性能担体と連続洗浄機構により、固定床の重大な欠点である槽の閉塞を完全に防止し、5~15kg-BOD/m3・Dもの高負荷運転が可能にしました。

1.高性能担体U-PAC
生物膜式(固定床)の排水装置は装置は槽内に充填する担体の表面積を大きくして、多量の微生物を保持することが重要です。しかし、あまり微細な構造にすると、過剰に生育した微生物により槽全体が閉塞し、運転不能に陥る恐れがあります。回転児雷也で使用しているU-PACは生物膜排水処理装置用に最適化された高性能担体です。
・表面積 U-PACの表面積は微生物付着前で125m2/m3、微生物付着時には500m2/m3にも達し非常に多くの微生物を槽内に保持することが可能です。
・剥離性 U-PACは短い線が外側を向いた形状をしているため、散気空気が通過する際に過剰に生育した生物膜が剥離しやすくなっています。
・微細気泡 散気管から放出された空気は、U-PACの充填層を通過する際、せん断を受け微細気泡となり、高い酸素移動効率が実現できます。

2.連続洗浄機構
回転児雷也の散気管は空気供給器から垂直に下降する主管と、これと直交する枝管とから構成されており、主管を中心として回転するようになっています。担体に直接散気空気があたることで過剰に生育した生物膜を剥離することができます。回転散気管が回転すると、直接散気空気があたるポイントも移動し、連続的な洗浄(剥離)を実現することができます。従来の生物膜式排水処理法では、過剰な生物膜を逆洗により剥離しますが、逆洗のたびに水質が悪化します。回転児雷也では連続的に洗浄・剥離を行うため、槽の閉塞を起こすことなく、長期間安定した運転を継続することができます。

スーパー加圧浮上

スーパー加圧浮上
1.固液分離の原理
水中の粒子に微細な気泡を付着させ、粒子を浮上・除去する技術です。SSの除去法として沈殿法と並び広く用いられています。粒子の分離速度が速いので装置がコンパクトになり、得られる汚泥が濃度も高いため、脱水などの後段処理も容易になります。

2.沈殿法との比較
沈殿法 加圧浮上法
粒子の分離 沈降 浮上 
分離速度 小 大
分離汚泥 低濃度、不安定 高濃度、安定 
設置面積 大きい 小さい
主な用途 土砂など 凝集汚泥、油分など
加圧浮上法は気泡が付着しやすく、軽い粒子(凝集汚泥や油脂分など)の除去に適しています。一方、沈殿法は土砂などの重い粒子の除去に適しています。粒子の分離速度は加圧浮上法の方が大きいため、浮上可能な場合は加圧浮上法の方が多くの場合有利となります。

楕円板式汚泥脱水機「Kーヴァル」

楕円板式汚泥脱水機「Kーヴァル」
1.楕円板式汚泥脱水機とは
Kヴァルは金属加圧板と楕円板を使用した圧力型脱水機で (株)研電社から技術導入をした従来にない新しい脱水機構を有する脱水機です。

薬品で凝集した汚泥を楕円板にて効果的にろ液と汚泥に分離させた状態にし、加圧板で汚泥に強い圧力を掛けて押し出す事により 従来の多重円板型脱水機よりも脱水効率を高めることが出来ます。

2.多重円盤型脱水機との比較
多重円盤型脱水機 楕円板脱水機
押出力 弱 強 
加圧力 弱 強
含水率 やや良い 良い 
処理量 小 大
主な用途 土砂など 凝集汚泥、油分など

とくとくーぶぶぶ

メタン発酵菌は酢酸など一部の有機物のみメタンガスに変換することができます。このため食品工場などの排水を処理するには、排水中の有機物を酢酸などに一度変換することが必要です。
①「加水分解・低分子化」
 油分・タンパク質・デンプンなどの高分子を糖類、アミノ酸、高級脂肪酸などに低分子化します。
②「酸発酵」
 糖類、アミノ酸、高級脂肪酸などを酢酸などに転換します。
③「メタン発酵」
 酢酸などをメタンガスに変換します。

 この中で①の工程は反応速度が遅いことから実装置が非常に大きな設備になってしまうため、メタン発酵の適用範囲は①の工程を必要としない糖類やアルコールなど、比較的低分子量の有機物に限られてきました。一方で食品残渣や汚泥などの固形物を対象としたメタン発酵は、対象物(固形で濃縮されてる)の量が少ないので数週間と長い反応時間を取ることができ、幅広い物質を受け入れることができます。

エイブルではメタン発酵の適用範囲を拡大するため以下のような技術の開に成功しました。

①前処理でデンプン・タンパク質・脂質などを濃縮固形化して取り除く。
②除去した成分を可溶化槽において数週間かけて低分子化・再溶解させる。
③①の液体部分と③の再溶解分には比較的低分子で速やかに分解可能な成分だけが含まれるので、これを併せて酸発酵・メタン発酵を行う。

※分解の遅い成分のみ濃縮固形化して分離することで体積を小さくし、比較的小さな反応槽でも長時間反応による低分子化を実現。今まで処理が困難だったデンプン・タンパク質・脂質などを含む排水のメタン発酵処理を可能にしました。

3.適用可能な排水
 この技術によりデンプン、タンパク質、脂質を含む排水がメタン発酵の対象となります。メタン発酵排水処理の適用範囲は、殆どの食品工場排水、多くの化学工場に広がり、多くの工場で創エネルギー・省エネルギーを実現しCO2発生量を削減して脱炭素社会の実現に貢献することができます。