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2025年、最新のカーボンニュートラルとは?食品業界にも応用できる異業種の先進事例5選コラム


 近年、世界的に「カーボンニュートラル」を巡る社会的動向が活発化しており、国際会議や環境省の政策発表などを通じて脱炭素への取り組みが加速しています。こうした動きは、日本国内でも経済産業省や各種産業団体が技術開発やロードマップを策定するなど、産業界全体の課題として明確化されつつあります。

 特に食品業界においては、水やエネルギー資源の効率的な活用、発生するCO₂の排出削減、そして資源のリサイクル化といった取り組みが今後ますます重要になってきます。本記事では、2024〜2025年に発表された異業種の注目事例の中から、食品企業でも応用可能な技術や戦略をピックアップし、気候変動対策としての実施メリット具体的な支援策との関連も含めて解説します。

カーボンニュートラルとは?

 カーボンニュートラルとは、化石燃料などから発生する温室効果ガスの排出量を、森林吸収や再生可能エネルギーなどの回収・代替策とバランスを取ることで、全体として“実質ゼロ”にする社会的・技術的取り組みです


 その中心にあるのが、「Scope1〜3」という国際的に定められた排出区分で、企業の取組計画を明確に策定する上での基本指標となっています。これらの数値データをLCA(ライフサイクルアセスメント)などで表示・評価し、将来的な脱炭素経営の戦略に組み込むことが期待されています。

事例①:トヨタ自動車

水素技術を活かした工場排出の削減ロードマップ

背景

 トヨタは、自動車製造業というエネルギー多消費産業のリーディングカンパニーとして、Scope1の排出量削減が喫緊の課題でした。特に、工場の加熱・乾燥工程で使用する化石燃料由来の熱エネルギーはCO₂排出の主因の一つです。

技術開発

 上記の課題の対策として導入されたのが、水素ボイラーやアンモニアとの混焼技術です。水素は燃焼時にCO₂を発生させない次世代燃料として注目され、経済産業省が推進する技術開発支援制度の対象にも選ばれました。

成果と展望

 愛知県の元町工場での先行導入を皮切りに、2030年までに国内7拠点への水平展開を計画中。燃料転換により工場排出の30%以上削減を狙い、水素流通網の構築とともに「脱炭素インフラ」として他業種への技術提供も視野に入れています。

食品業界への応用

 食品工場でも、加熱やボイル工程における高温熱源として水素燃焼設備を導入することで、CO₂排出を大幅に削減できます。特に、国の補助金・支援制度を活用することで初期投資を抑えた導入も可能です。

事例②:パナソニックエナジー

AIとIoTを活用したエネルギーマネジメントの次世代モデル

背景

 電力の使用が集中するバッテリー製造工場では、ピーク時の電力使用量の最適化とCO₂排出の“見える化”が大きな課題です。RE100に加盟するパナソニックエナジーは、国内外の全工場で電力のスマート制御を推進しています。

技術開発

 社内のAI・IoT部門と連携し、過去の稼働データをもとに電力使用パターンを学習。電力供給の需給バランスや天候要因も加味しながら、生産スケジュールを自動最適化するシステムを構築しています。

成果と展望

 2024年のデータでは、ピーク電力使用量を前年比15%削減。CO₂排出量については、月次単位で工場別に「CO₂表示形式」で社内に公表し、部門ごとのKPIとして活用しています。

食品業界への応用

 冷凍・冷蔵ラインや大型空調設備などの“見える化”により、食品工場でも同様のマネジメントが可能。CO₂削減実績を対外的に「資料形式」で報告できるようにしておくことで、企業価値向上にも繋がります。

事例③:大和ハウス工業

建設業におけるZEB実装と仮設電源の脱炭素化

背景

 建築・建設分野は、セメント製造や建設機械の運用によるCO₂排出が多い分野です。特に、仮設工事用の電源は見過ごされがちですが、年間を通じて膨大なエネルギーを消費します

技術開発

 大和ハウスは、BIM(建築情報モデリング)を用いたZEB(Net Zero Energy Building)設計と仮設電源の再エネ化をセットで推進。作業現場での太陽光発電やグリーン電力契約を積極的に導入しています。

成果と展望

 2024年時点で、ZEB仕様の自社施設は累計100棟を突破。仮設電源も、太陽光+蓄電池を組み合わせたモデルで実証済み。建物単位でのエネルギー収支ゼロを現実のものとしています。

食品業界への応用

 食品工場の新築・改修時にZEB設計を取り入れることで、長期的な光熱費削減と環境経営の両立が可能に。冷蔵倉庫などの高エネルギー施設での導入効果は特に大きく、補助金制度との連携も期待できます。

事例④:日立製作所

LCA自動算出による製品・部品単位での脱炭素管理

背景

 製造業では、製品そのものよりも、部品・原材料・サプライヤーからの間接排出(Scope3)がCO₂排出の大半を占めています。日立製作所では、これまで部品ごとの環境負荷を把握することが困難であったことが大きな課題でした。加えて、国際調達の現場では、取引先から「製品単位でのLCA(ライフサイクルアセスメント)提示」が求められる機会が増えており、LCAの迅速な算出と標準化が急務となっていました。

技術開発

 LCA(ライフサイクルアセスメント)を製品ごとに自動計算するクラウドツールを開発。2025年から、顧客が製品選定時に環境負荷を比較できるサービスを正式提供予定です。

成果と展望

 すでに複数の家電・産業機器で試験運用を実施。リサイクル素材への切替率やCO₂排出比較を表示し、取引先との共同改善を進めています。また、LCA結果を環境表示制度に連動させる構想も発表済みです。

食品業界への応用

 原材料・包材などの調達先や使用素材をLCA視点で可視化することで、環境宣言型の表示やグリーン調達の基準強化が可能です。今後は「環境配慮型商品」としての差別化にもつながります。

事例⑤:ANA(全日本空輸)

持続可能な航空燃料(SAF)とサプライチェーン連携モデル

背景

 航空業界は排出量の多さから、国際機関(ICAO)による規制強化を受け、脱炭素対応が急務特にCORSIA制度により、国際便での排出オフセット義務が課せられています。

技術開発

 ANAは、伊藤忠商事・レボインターナショナルなどと共同でSAF(Sustainable Aviation Fuel)の安定調達スキームを構築。さらに、サプライチェーン上の排出削減価値を“顧客に分配する”新しい制度を開始しました。

成果と展望

 2025年までに、全国際線の1%以上をSAFに切替予定。法人契約顧客向けには「脱炭素型輸送オプション」として、CO₂排出削減分を企業アカウントに記録・提供する仕組みを整備中です。

食品業界への応用

 冷凍品・生鮮食品の国際輸送において、SAFを使用した輸送サービスを選ぶことで、Scope3削減を「取引先に見せる指標」として活用可能。表示義務化に対応できる準備にもなります。

まとめ・関連記事

他業界のカーボンニュートラル事例から学ぶ食品工場の未来

 カーボンニュートラルの実現には、全体の流れを把握した上で“できるところから始める”戦略が最適です。今回紹介した事例から見えてくる共通点は以下の通りです:

  •  社会全体の仕組みづくりに貢献する姿勢
  •  データを活用した計画的な削減
  •  他企業との協力を前提とした展開

 食品業界でも、これらの視点を取り入れながら段階的な制度整備と経営への組み込みを進めていくことが、将来の信頼構築・事業拡大の鍵となるはずです。

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