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企業の取り組みから学ぶ!食品業界のカーボンニュートラル事例コラム


 気候変動や地球温暖化が深刻化するなか、政府や自治体、環境省、経済産業省などの関連機関は、企業に対し積極的な排出削減対策を求めています。食品業界は、CO2や二酸化炭素の排出が多い産業のひとつであり、脱炭素社会の実現に向けた重要な分野とされています。
 特に食品関連企業では、2020年以降のグリーン成長戦略に沿った具体的な計画や施策の策定が求められており、2025年にはさらなる強化が期待されています。

 本記事では、実在する食品関連企業の最新事例を紹介し、環境に配慮したビジネスの推進やサステナビリティの実践方法、排出削減のメリットをわかりやすく解説します。関連情報や支援制度も交え、今後の事業推進に役立つ内容をまとめました。

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルの定義と目的

 カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(主に二酸化炭素)の排出量と吸収・除去量を均衡させ、実質的にゼロにする考え方です。パリ協定の採択(2015年)以降、国際社会で急速に関心が高まり、日本でも2020年に政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。

2050年カーボンニュートラルとは?

 日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す国家目標です。この方針は、産業構造やエネルギー供給の転換を求めるものであり、企業や自治体にも取り組みが求められています。食品業界でも、この目標を見据えて排出削減の技術導入や再生可能エネルギーの活用が進められており、カーボンニュートラルの実現に向けた動きは広がりを見せています。

カーボンニュートラルを達成するための技術と方法

 カーボンニュートラルの実現に向けて、企業や自治体では多様な技術と戦略を組み合わせながら取り組みが進められています。以下のような方法が代表的です(これらは環境省や経済産業省の支援策にも対応しています):

  • 再生可能エネルギーの導入(太陽光発電・風力発電、バイオマスなど多様な選択肢)
  • 省エネルギー技術の導入(高効率機器やインバーター、省電力制御システムの活用)
  • 炭素貯留(CCS)や自然エネルギー活用(地熱・水力を含む)による排出抑制
  • 業務・物流の最適化(輸送ルートの見直しや需要予測のAI活用)による電気使用量の削減カーボンオフセットの活用(排出削減が困難な分野の補完策として重要)

カーボンオフセットの役割

 カーボンオフセットとは、自社では削減が難しい温室効果ガスの排出量を、他の地域やプロジェクトでの削減活動(例:森林保全、太陽光発電、風力発電など)によって相殺する手法です。再エネの導入や省エネ対策と並んで、排出量の「実質ゼロ」を実現するための重要な補完策とされています。特に、グローバルな気候変動対策の文脈では、オフセットを通じてより幅広い環境貢献が可能になる点が注目されています。

食品業界における現状と課題

食品製造分野の環境負荷

食品工場では、原材料の加工から包装、保管、配送に至るまで多くのエネルギーを消費しています。排出される二酸化炭素の量は、工場の立地や工程によって異なりますが、以下のような特徴が見られます:

  •  冷蔵・冷凍工程に伴う電力消費量が多い
  •  重油・LPGなどの化石燃料による熱源利用
  •  長距離輸送に伴う車両からのCO2排出

これらの問題に対応するため、環境省・経済産業省が主導する補助金制度や自治体独自の支援策が整備されつつあります。

関連制度と支援メニュー

 カーボンニュートラルへの移行に向けて、国や自治体は多様な支援制度を設けています。以下の補助金や支援事業は、食品業界でも活用が広がっており、再エネ導入や省エネ設備への投資を後押しする重要なツールです。

  • 「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」:高効率機器の導入やプロセス改善による省エネ対策を支援。
  • 「グリーン成長戦略支援補助金」:脱炭素社会の実現に資する設備投資を行う事業者に対して補助金を交付。
  • 「地域脱炭素ロードマップに基づくモデル構築支援」:自治体と企業の連携による先進的な脱炭素プロジェクトを支援し、全国展開のモデルケースを創出。

カーボンニュートラルに取り組む食品企業の事例

 ここでは、食品業界のカーボンニュートラル化における代表的な企業5社の取り組みを紹介します。

ネスレ日本|再エネ100%達成工場を実現

 ネスレ日本は、2022年に兵庫県の姫路工場において再生可能電力100%化を達成。地域との連携と、環境省が掲げる再生可能エネルギー導入指針に基づいたモデル事業としても評価されています。


主な取り組み内容

  • 屋根上に太陽光パネルを設置し、自社電力の供給を一部賄う
  • 電力契約を再エネ由来に切り替え、グリーン電力証書を活用
  • 年間で数千トンの二酸化炭素排出を削減

 また、同社は気候変動に関する国際的な枠組みへの対応を強化し、SBT認定の取得や、スコープ1・2排出量の公開などにも取り組んでいます。

味の素株式会社|ボイラー更新と蒸気回収の両立

 味の素は、川崎工場をはじめとした複数拠点で高効率ボイラーの導入とスチーム回収の併用により、省エネと排出削減を同時に実現。この取り組みは、「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」にも採択されました。


主な取り組み内容

  • 都市ガスへの燃料転換により、CO2排出を抑制
  • 蒸気の再利用により熱エネルギー効率を向上
  • 工場全体でのエネルギー原単位を改善

 さらに、LCA(ライフサイクルアセスメント)を活用し、製品単位での環境負荷を「見える化」。データに基づいた脱炭素戦略の策定と展開を進めています。

伊藤園|容器から物流まで一貫したCO2削減

 伊藤園は、資源循環型パッケージと低炭素物流体制の構築により、脱炭素社会に向けた実践的取り組みを強化しています。また、グリーン成長戦略に基づいた2030年排出削減目標を策定しており、パッケージデザインの変更も含めた多角的アプローチを展開中です。

主な取り組み内容

  • リサイクルPETボトルを100%使用した製品を拡大
  • モーダルシフトや複合拠点整備により輸送効率を改善
  • 電気使用量や燃料使用量を削減し、CO2排出を低減

アサヒグループ|スコープ3排出量まで開示

 アサヒグループホールディングスは、企業全体でのカーボンマネジメントを推進し、サプライチェーン全体にわたる排出量の把握と管理を行っています。また、グリーン電力の直接購入や、カーボンオフセットの活用など、国際的に整合性の取れた脱炭素施策を展開しています。


主な取り組み内容

  • スコープ1・2・3を網羅した温室効果ガス排出量を開示
  • 海外グループ会社との連携で統一指標を導入
  • AI・IoTを活用したエネルギー管理システムを構築

山崎製パン|物流のEV化と冷蔵庫の高効率化

 山崎製パンでは、食品流通におけるCO2削減のため、EVトラックの導入やインバーター冷蔵設備の更新など、設備面からのアプローチを進めています。同社は、2050年までの温室効果ガス削減ロードマップを独自に策定しており、製造・物流両面からの取組を強化しています。


主な取り組み内容

  • 一部エリアでEV配送を実施し、地域密着型の脱炭素輸送を推進
  • インバーター式冷蔵庫の導入で電力消費を約20%削減
  • 商品品質を維持しつつ環境配慮型設備への切り替えを進行中

まとめ・関連記事

“企業の責任”から“企業の価値”へ

カーボンニュートラルへの取り組みは、単なるCSRではなく、企業が社会から選ばれるための戦略的要素となっています。

  • 商品やサービスの差別化要因としての環境配慮
  • 企業ブランドの向上と顧客獲得への貢献
  • SBT認定、ESG評価など投資家向けの価値向上にも寄与

 企業規模を問わず、“脱炭素型ビジネスモデル”への転換は、ビジネスチャンスの拡大につながるものです。また、社内での環境教育の実施、AI・DXを活用したエネルギー管理の高度化、さらにはグリーン成長戦略と調和した中長期の行動計画を立てることが、今後の持続的な成長に不可欠です。今後、自治体や産業界が一体となって取り組むことが、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた鍵となるでしょう。

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