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食品工場の熱中症対策【基本編】|現場で命を守るポイントとは?コラム

毎年のように更新される猛暑日。2025年の夏も、気象庁によれば全国的に平年より高温となる見通しです。 こうした中で懸念されるのが、「職場での熱中症」です。厚生労働省によると、2023年の職場における熱中症による死亡者・休業4日以上の死傷者数は992人。中でも製造業・食品関連業界は高リスクの現場とされています。特に食品工場や飲食店舗などは、高温・多湿かつ衛生服の着用が求められる環境で作業することが多く、熱中症のリスクが非常に高くなります。
本記事では、食品業界における熱中症の基礎知識から、ハード・ソフト両面の対策、現場に合わせた工夫まで、基本的な考え方と具体策をお伝えします。
★食品工場の熱中症対策【ハード編】はコチラ
★食品工場の熱中症対策【ソフト編】はコチラ
熱中症とは? ーその仕組みと危険性
熱中症の定義
熱中症とは、高温・多湿な環境に長時間さらされることで、体温の調整機能が働かなくなり、体内に熱がこもってしまう状態のことです。人間の身体は汗をかいて熱を放出しますが、湿度が高いと汗が蒸発せず、熱が逃げにくくなります。その結果、体温が異常に上昇し、さまざまな症状を引き起こします。
こんな症状は要注意
熱中症の症状は段階的に進行し、以下のように分類されます:
軽度
めまい、立ちくらみ、大量の汗、筋肉のこむら返り(熱けいれん)
中等度
頭痛、吐き気、倦怠感、集中力の低下(熱疲労)
重度
意識障害、けいれん、歩行困難、体温の異常上昇(熱射病)
これらの症状を見逃さず、早期発見と迅速な対応を行うことが命を守るポイントです。
現場で重要な2つの視点|「ハード」と「ソフト」の対策
熱中症対策は大きく2つの側面に分けて考えることが重要です。
▶ ハード面の対策(環境や設備の工夫)
高温環境そのものを見直し、身体にかかる熱負荷を減らすことが第一です。
スポットクーラーや送風機の設置
蒸気がこもる加熱ラインや、空気の滞留しやすい作業場では、局所的に冷却できる機器を設置しましょう。
空調服や冷却ベストの導入
長袖作業着が必須でも、ファン付きユニフォームや、保冷剤を入れたベストで効率よく体表温を下げられます。
遮熱・断熱対策
窓からの直射日光には遮光フィルムやカーテンを設置。屋根や壁には断熱材の追加を検討しましょう。
★ハード面対策をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
食品工場の熱中症対策【ハード編】|現場の環境を改善する設備とツール
▶ ソフト面の対策(行動やルールの工夫)
設備を整えても、人の行動が変わらなければ意味がありません。
現場全体で「守るべきルール」を共有し、習慣化することが大切です。
水分・塩分補給のルール化
給水タイムの設置
1時間ごとに給水の声かけやアラームで促進。
補水ツールの支給
経口補水液や塩飴などを現場に常備。
給水スペースの確保
衛生区域外にパーソナルな給水場所を用意。
作業スケジュールの見直し
高温時間の作業回避
13〜15時を避けて作業時間を工夫。
休憩のリズム化
60分作業ごとに5〜10分の短時間休憩を取り入れる。
体調チェックの仕組み化
朝礼時に「体調申告」を必須化。
体調チェックと声かけの徹底
「大丈夫?」のひと声が、異変の早期発見につながります。上司から部下だけでなく、仲間同士で自然に声をかけあえる空気づくりを目指しましょう。
★ソフト面対策をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
食品工場の熱中症対策【ソフト編】|ルール・声かけ・教育で守る職場の安全
食品業界特有の対策が必要な理由
一般職場と異なり、食品業界では衛生管理との両立が求められます。
例えば、マスク・長袖・帽子の着用は作業者の体温上昇を引き起こしやすく、また高温の調理器具周辺での作業や火気を扱う調理場では外気温以上の環境で働かざるを得ません。そのため、一般的な熱中症対策をそのまま導入するだけでは不十分な場合もあります。
食品現場ならではのリスク
衛生服の着用による熱こもり
マスク・手袋・長袖服の常時着用は衛生管理上不可欠ですが、体表面からの熱の放散を妨げ、体温の上昇を招きます。特に通気性の悪い素材や多重構造のユニフォームは熱中症リスクを高めるため、夏季は素材や構造の見直しが必要です。
加熱エリアの高温環境
炒め・焼き・煮る工程を扱う調理場や加熱ラインでは、火気・油・蒸気などの熱源により室温が上がりやすく、エリアごとに気温差が発生します。こうした局所的な高温地帯は熱中症のホットスポットとなるため、重点的な対策が必要です。
冷蔵・冷凍室との寒暖差
冷蔵室や冷凍庫との行き来が頻繁な作業では、急激な温度変化によって自律神経が乱れ、体温調節機能が低下することがあります。特に汗をかいた後の急激な冷却は体調不良につながることがあるため、衣服の調整や移動時間の工夫が求められます。
給水タイミングの制限
製造ラインが止められない現場や、衛生エリア内では自由に水分補給ができないケースもあります。そのため、あらかじめ給水タイムを設定したり、作業交代時に補水できるようなルール設計が重要です。飲料の持ち込みが難しい環境でも、補給の機会をどう確保するかが対策のカギとなります。
食品現場ならではの工夫が必要
通気性・冷感素材を用いた衛生服の導入
夏場専用ユニフォームの採用や、速乾性・吸湿性に優れたインナーの活用も有効です。
冷蔵エリアとの寒暖差に備えた体温調整マニュアルの整備
冷凍・冷蔵室との行き来がある現場では、急激な温度変化による体調不良を防ぐため、着脱可能なベストやアウターの常備が推奨されます。
衛生を守りつつ短時間で水分補給できるルール設計
作業区域ごとに定期的な水分補給タイムを設けるほか、個別に飲料を持ち込める専用エリアの設置が現実的な対策となります。
もしもの時の応急処置マニュアル
いくら対策をしても、完全に防ぐのは難しいのが現場の現実です。特に食品工場のような高温多湿の職場では、症状が突然悪化することもあります。だからこそ、初動対応を全員が共通認識として持つことが命を守る鍵となります。
応急対応の基本
1.すぐに涼しい場所へ移動
屋外や作業エリアから離れ、空調の効いた部屋や風通しの良いスペースに避難させます。
2.衣服をゆるめ、体を冷やす(首・脇・脚の付け根)
保冷剤・氷嚢・冷たいタオルを使い、太い血管の通る部分を集中的に冷却しましょう。
3.水分補給(意識がある場合のみ)
経口補水液やスポーツドリンクなど、塩分も含んだ水分を少しずつ与えます。誤嚥を避けるため、意識があるかどうかを必ず確認してください。
4.回復しない、または重症が疑われる場合は119番通報
救急隊には「熱中症の疑いがある」と伝え、指示を仰ぎます。到着まで冷却を続けましょう。
現場に応急対応マニュアルを浸透させる工夫
応急対応の手順を「紙に印刷して掲示」「朝礼で共有」「新人研修に組み込む」などの形で可視化し、自然と行動できる体制を整えましょう。応急処置用の備品(経口補水液、保冷剤、冷却シートなど)はすぐに使える場所に常備することが大切です。
まとめ
食品業界における熱中症対策は、労働環境の安全性を守るだけでなく、従業員の命を守るために不可欠な取り組みです。
1.環境を整える「ハード対策」
2.行動とルールを変える「ソフト対策」
3.業界特有のリスクへの「柔軟な工夫」
4.万が一に備える「応急対応と教育」
これらをバランスよく組み合わせ、「予防」と「備え」を現場に根づかせることが最大の対策です。今すぐできる対策から始めて、働きやすく安全な職場づくりを実現しましょう。
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